デニッシュ食パンの正規品と訳あり品が並ぶ「アンデ」の直売所。訳あり品が売られるかは製造時の状況に左右されるが、お得感が人気だ(京都市伏見区)

デニッシュ食パンの正規品と訳あり品が並ぶ「アンデ」の直売所。訳あり品が売られるかは製造時の状況に左右されるが、お得感が人気だ(京都市伏見区)

工場の一角に設けられている「京都特産ぽーく」の直売所。周辺にはかつて、養豚農家が多くあった(京都市南区)

工場の一角に設けられている「京都特産ぽーく」の直売所。周辺にはかつて、養豚農家が多くあった(京都市南区)

 京都市南区と伏見区にまたがる名神高速・京都南インターチェンジ(IC)周辺に、さまざまな食品の工場直売所が集中し、知る人ぞ知る「聖地」となっている。一般には流通しにくい「訳あり品」を格安で販売し、出来たての味が楽しめる直売所は、新型コロナウイルスの影響で長くなりがちな「おうち時間」の楽しみにもなる。

 小麦の味わいが感じられる「プレーン」や、チョコレート、抹茶…。コンテナを改装した売り場に、デニッシュ食パンが並ぶ。伏見区下鳥羽にある「アンデ」の工場直売所だ。

 焦げたり、形が崩れたりした訳あり品を市販の約半額で販売し、正規品も2割程度割り引く。区内に住む男性(70)は「訳あり品があれば優先的に買う。気心が知れた人への贈り物にも良い」と愛用する。直売所責任者の西川由子さん(59)は「『きょうは何があるかな』という楽しみがある。コロナで外食を控えている人にも、普段と違う物を安く食べて、心を癒やしてほしい」と願う。

 同社は工場拡張のため、2002年に伏見区深草地域から現在地に移転。直売所は食品ロス削減のため、3年半ほど前に設けた。同社は「交通の便が良く、他府県から買いに訪れる人もいる」とする。

 京都南IC周辺は、近くに第二京阪道路のICもあり、国道1号も走る。南ICからおおむね3キロ圏内を調べると、菓子やパン、うどんといった食品工場と直売所を併設する事業所が、10カ所以上、確認できた。市が容積率緩和などの誘致策を進める「らくなん進都」に含まれる部分も多く、「流通面での利点に加え、元々は農地が多く、まとまった土地が確保できる点も、工場立地につながっているのでは」と分析する。

 かつての地場産業と密接に関係した直売所もある。南区上鳥羽の「京都特産ぽーく」は南丹市産の豚を食肉やハム、ソーセージなどに加工し、飲食店や百貨店などに卸している。工場スタッフが直売所の販売員を兼ねるため、月に3日ほどしか開かれないが、開店日には長蛇の列ができることも。

 「この辺りには養豚農家が多く、かつて農家組合の豚肉加工場があった」と、水森猛社長(48)は語る。市農林統計によると、1980年度には市内に40戸の養豚農家があり、うち13戸が南区だった。その後、徐々に減少していく中、同社が20年ほど前に加工場の経営を引き継いだ。

 直売所の開設は昨年3月。「製品を買いたい」と、工場を訪ねる人が相次いだのがきっかけだ。

 独自の味を、財布に優しい価格で届けるだけでなく、地域の過去や今を映し出す直売所。企業集積が進む地域で、新たな輝きを放っている。