遺体が入ったスーツケースが漂着した琵琶湖岸一帯を捜索する警察官ら(18日午前11時57分、彦根市薩摩町)

遺体が入ったスーツケースが漂着した琵琶湖岸一帯を捜索する警察官ら(18日午前11時57分、彦根市薩摩町)

 滋賀県彦根市薩摩町の琵琶湖岸で、スーツケースの中から遺体が見つかってから、24日で1週間がたった。遺体は死後半年以上が経過し、身元や死因が分からない中、滋賀県警は18日、死体遺棄事件として彦根署に捜査本部を設置。ケースには鎖が巻き付けられていたような跡があったことも判明し、何者かが発覚しないよう湖中に沈めた可能性もある。捜査本部は殺人の疑いも視野に入れ、身元の特定などを進めている。

 湖岸沿いの閑静な集落で、湖面に浮かぶケースが目撃されたのは14日ごろ。住民の男性(83)によると、ケースは膨らんだ状態で浅瀬に浮き、翌15日には砂浜に漂着。湖岸の清掃活動でケースを見た地元老人会のメンバーの中には、「死体ちゃうか」と冗談ぽく話す人もいた。

 ケースは縦85センチ横55センチで、黒い布製のチャック式。15日には数人が手をかけたが中身はよく見なかったという。17日昼、中からシートがはみ出しており、男性がめくると、「茶色い肉のようなものが見えた」。駆け付けた彦根市関係者と中身を確認すると、白骨化した頭部と手が見え、同署に通報した。老人会長の男性(69)は「普段からごみの漂着が多く、地元住民はケースも流れ着いたと思っている。不審人物の目撃情報もない」と、早期解決を願う。

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 遺体を確認した県警は司法解剖の結果、「45~60歳くらいで身長は約170センチ」と発表。着衣はなく、大部分が白骨化し死因も不詳だが、目立った外傷などはない。捜査関係者によると、遺体は市販されている普通車サイズのボディーシートにくるめられ、ケース内に固定された形跡はない。

 捜査関係者らの説明では、遺体の骨は、発見時に右足の一部がなかったが付近の捜索で見つかり、ほぼ全身の部位がそろっている。ただ、通常は、骨盤や頭骨の形状などから性別を判別できるが、今回は判断が難しい状態という。県警には行方不明者の情報提供や問い合わせが数件あるといい、照会するなどして身元の特定を急いでいる。

 さらに、推定年齢が「比較的若い」として、県警は殺人の疑いも視野に入れる。「70~80代なら病死後に遺棄された可能性もあるが今回はそれより若い。殺された疑いは十分にある」。そう指摘する捜査関係者によると、ケースには鎖が巻き付けられていたようなさびがあった。鎖などは発見されていないが、発覚を恐れた人物が重しをつけて沈め、遺棄した疑いもあるとみている。

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 一体、ケースは「いつ」「どこで」「どのように」湖に投棄されたのか。県警は「遅くとも15日には現場付近に流れ着いた」とみるが、ケースにさびが付着していたことから一定期間沈められていた可能性もある。

 「(彦根市沖など)琵琶湖大橋以北の北湖では、春になると、全域で反時計回りの大きな環流が生じる。漂流物は大きさや形状を問わず、流れに乗って彦根付近に行き着くことが多い」。琵琶湖博物館(草津市)の戸田孝学芸員=地球物理学=はこう解説する。その上で「何らかの重しが外れて浮いたケースが流れに乗る可能性があるが、どこで遺棄したとしても彦根付近に行き着く。流れから逆算して遺棄場所を特定するのは難しい」と指摘する。