昨年1年間に自治体に出された妊娠届は前年比4・8%減の約87万2千件で、過去最少となった。

 出生数の減少は半世紀にわたる傾向だが、昨年は新型コロナウイルス流行を考慮して妊娠を控えた人が少なくないとみられている。

 コロナ禍が拍車をかけている。届け出の一部が反映される今年の出生数は、80万人を割り込む可能性が濃厚だ。これまでの少子化対策に加え、感染が今後も続くことを想定した対応が求められよう。

 出生数は2016年に100万人を割り、19年に90万人を下回った。減少ペースは加速している。

 感染への不安が高まった昨年3月ごろに妊娠した人が届け出る5月の件数が同17・6%減と大きく落ち込み、6~8月も減少幅は5~10%台で推移した。

 今年1月の届け出も7・1%減で、昨秋からの感染「第3波」と関連があるとみられている。

 昨年は、妊婦が通院を抑制したり、不妊治療を延期したりする事例がみられた。臍帯血(さいたいけつ)バンクを運営するステムセル研究所が今年1月に行った調査では、出産や子育てに不安を感じるとした妊婦の9割がコロナ禍を理由に挙げた。

 妊娠や出産を考える女性たちの懸念をやわらげる方策が必要だ。

 コロナ禍による暮らし向きの悪化も見過ごせない。妊婦が不妊治療を延期した背景には経済的な不安が存在するとの指摘もある。

 総務省の家計調査によると、昨年度の1世帯当たりの月平均消費支出は前年度比4・9%減で、過去2番目の下げ幅となった。

 家計を切り詰めざるを得ない状況が続けば、妊娠や出産をためらう人もいるのではないか。

 こうした状況に政府の目配りは十分とはいえない。緊急事態宣言などで減収となった事業者や働く人への財政支援やワクチン接種などでも対応は後手に回っている。

 妊婦へのワクチン接種に関しては、日本産科婦人科学会などが「現時点では接種のメリットがリスクを上回る」として、人口当たりの感染者が多い地域では積極的な接種を考慮するべきだとしている。

 高齢者や基礎疾患のある人に加え、妊婦や妊娠希望者にも優先接種できる措置が必要ではないか。

 菅義偉政権は、不妊治療の保険適用拡大や子ども政策を一元化する「こども庁」創設などに意欲的だが、制度の手直しにとどまる。

 妊婦らが現実に抱いている不安に寄り添う施策を具体的に打ち出すことができるかが、コロナ禍の今、改めて問われている。