政権を批判する者は、どんな手を使っても弾圧する。そんな見境のない暴挙を許すわけにはいかない。

 ベラルーシのルカシェンコ大統領が命じた旅客機の強制着陸、反政権ジャーナリストの拘束だ。

 空の安全を脅かし、人権を踏みにじる事態は見過ごせない。調査に乗り出した国際民間航空機関(ICAO)だけでなく、国際社会は情報を持ち寄り、指揮命令の経緯などを解明する必要がある。

 ルカシェンコ氏は強制着陸ではないと否定している。旅客機に爆弾が仕掛けられたとの情報があったといい、「人々を守るため合法的に行動した」と正当化する。

 だが、機内から爆発物は見つからず、情報が届いたのはベラルーシ当局が着陸に向かわせた後という。弁明には疑問符が付く。

 恐ろしいのは、戦闘機で旅客機を誘導し、進路方向を大きく変更させたことだ。ギリシャを飛び立ち、ベラルーシ領空を過ぎる寸前で、緊急着陸するなら目的地リトアニアの空港の方が早い。

 航空関係者は、飛行計画のルートを離れるリスクを指摘し、乗客を危険にさらしかねないという。「国家主導の海賊行為」との非難が出るのは当然だ。

 欧州連合(EU)の要請に応えて、多くの航空会社がベラルーシ上空の飛行を回避しており、航路のある全日空も避けている。領空通過料が入らないベラルーシは、経済的損失を被ることになる。

 さらにEUや英国、米国は経済制裁や対抗策を準備している。大統領の愚行がもたらす代償だ。

 ルカシェンコ氏は昨年8月の大統領選で6選を発表したが、不正を訴える抗議活動が広がった。「欧州最後の独裁者」と呼ばれ、反政権派を徹底弾圧し、国外追放している。旅客機のジャーナリストを拘束したのも、度を越した強権ぶりを示すものだ。

 国連のグテレス事務総長は、ベラルーシの人権状況の悪化を懸念するが、国連の対応には限界があるようだ。安全保障理事会の非公開協議で、欧米8カ国が非難声明を出したものの、常任理事国ロシアがベラルーシを擁護し、一致した見解は示せなかった。

 旧ソ連に属した隣国ベラルーシを経済的に支える関係にあるにしても、独裁者の暴挙を容認するのは国際的な信用を落とすことになるのではないか。

 拘束されたジャーナリストの身の安全が心配だ。国際社会は解放を求め大きな声を上げたい。