憎悪と暴力の連鎖を断ち切るために、国際社会は結束を強めなくてはならない。

 治安の良さで知られるニュージーランド・クライストチャーチのモスク(イスラム教礼拝所)2カ所で銃乱射事件が発生し、少なくとも50人が死亡した。同国史上最悪の銃撃事件だという。アーダン首相は「テロ」と断定した。

 卑劣というだけではない。際だって異様な犯行である。容疑者は襲撃の際、「パーティーをはじめよう」と自身の頭部に着けたとみられるカメラで撮影しながら、ネット上で生中継していた。

 訴追された28歳のオーストラリア人の男は、声明で移民を「侵略者」と敵視している。

 2011年にノルウェーで計77人を殺害した極右の白人至上主義者から「大きな刺激」を受けたとしている。17年にロンドンで起きたイスラム教徒襲撃テロに触発されたという。

 他文化への偏見に基づいたヘイト犯罪が世界に広がっている。ネット中継は身勝手な思想をさらに拡散する狙いだったのか。断じて許すことはできない。

 ニュージーランドは白人と先住民マオリが住民の大半で、本来移民に融和的な「多文化主義」の国とされる。それだけに事件のショックは大きい。

 しかし、近年は移民の急増で住宅価格や家賃が高騰し、政権を担う労働党は17年の総選挙で「移民の抑制」を求めたという。

 気掛かりなのは、社会のそうした不寛容さの高まりが、今回の犯行の背景にあるのではないかということだ。

 移民や難民を排斥する動きは各地で増えてきている。トランプ米大統領はメキシコ国境への壁建設を強行しようとしている。欧州では移民の排斥を訴える極右政党が支持を広げている。

 格差の拡大や貧困で人々の不満が蓄積し、過激思想やテロの温床になっているとみられる。世界の政治リーダーは、人々が本来の思いやりを取り戻すために社会をどう見直すのか考えるべきだ。

 偏見をあおって支持を集めるのは、もってのほかではないか。

 排他的な風潮は社会を悪化させて、ますます生きづらくなるという認識を共有したい。求められるのは共生のための知恵だ。

 日本でも、ネットなどで依然としてヘイト的な言論が見られる。人々に鬱屈(うっくつ)した感情を募らせないために、何が必要なのかが問われている。