地域にとって医師の存在は、まさに命綱である。だが、都市部に集中する「医師偏在」が一向に解消されない。

 東北を中心に16県が人口や診療需要に対して適正な医師数を確保できていない「医師少数県」となっていることを、厚生労働省が明らかにした。

 医師の総数は過去最高の31万9千人だが、都市部と地方の格差は鮮明だ。

 医師偏在に国は効果的な対策を打ち出せていない。切り札として注目を集めたのが大学の医学部生に対する「地域枠」だが、十分に機能していない。

 専門家は「小手先の対策ではなく、根本的な手だてが必要」とする。もっと力強い誘導策が求められているといえよう。

 調査は「医師偏在指標」が使われた。これまでの「人口10万人当たりの医師数」よりも、実態に即した充足状態が分かるという。丁寧な調査は評価したい。

 「医師少数県」は指標が低い順から岩手、新潟、青森など。逆に指標が高い16都府県は「医師多数」とされ、京都は東京に次ぐ2位、滋賀も16位に入った。

 それでも都道府県内の複数の市区町村で指定する「2次医療圏」では、京都の「丹後」、滋賀の「甲賀」が少数区域となった。

 厚労省は2036年時点での各都道府県で必要とされる医師数も推計し、最も医師の確保が進んだ場合でも12道県で計5323人の不足が見込まれるとした。

 大都市圏では医師確保が進まない場合でも必要人数を上回ると予想している。このままでは格差が広がる一方ではないか。

 医師数の偏りは診療科によっても生じており、厚労省は産科医が最も足りないのは新潟、小児科医が最も足りないのは茨城とするデータを公表した。

 自治体が奨学金を貸与し、代わりに卒業後の一定期間地元で働く「地域枠」は、18年度に制度を導入していた大学の3分の1で、2割を超える欠員が出ている。

 背景には医学部を志望する若者たちの、へき地での勤務を忌避する意識があるともいわれる。もっと学生らの立場に立った制度が必要ではないか。

 医師不足の地方では1人で何役もこなさねばならず、過酷な労働環境が不安視されている。専門医の研修を積める研修先も少ない。

 若い人が地方医師として働く展望が持ちやすく、地方勤務がキャリア形成に有利になるような制度が求められる。