差別が存在し続けても構わないとでもいうのだろうか。

 自民党が、LGBTなど性的少数者への理解を広げる法案を今国会に提出しないことを決めた。

 超党派の議員連盟で調整し、自民の法案要綱に野党が修正を加える形でいったんは合意したが、成立は見通せなくなった。

 自民内に強い異論があり、土壇場で覆されたためだ。

 与野党協議で、法案の目的と基本理念に「差別は許されない」との記述が加えられたことに、一部の保守派が反発したとされる。

 政権党の人権感覚を疑わせる。

 議員連盟は5月31日の会合で、自民議員も含め引き続き努力を重ねることを確認した。次期国会では確実に成立させられるよう、党派を超えた連携を深めてほしい。

 問題とされた記述を巡っては、自民内で「『差別だ』と発言者を糾弾するような行き過ぎた運動を招く」「訴訟が多発する社会になりかねない」などと批判が出た。

 少数者の権利擁護よりも、自分たちへの批判を封じることを優先させたかのような反対論だ。

 このため、最終決定の場である総務会では対応が党三役に一任され、先送りが決まった。

 党内議論では見過ごせない発言もあった。LGBTなどについて「生物学上、種の保存に背く」などと述べた国会議員がいた。

 これには、研究者から「個体は種を保存するために存在するのではない」などとする反論があった。

 LGBTの支援団体からも発言撤回や辞職を求める9万4千筆の署名が党本部に提出された。

 当然の反応といえる。

 LGBTに関しては、2018年に別の国会議員が「生産性がない」と雑誌に寄稿し、厳しい非難を浴びた。今回の法案提出見送りは、性的少数者への偏見が党内に根深いことをさらに印象づけた。

 だからこそ、法律に「差別は許されない」と記述することがいっそう必要なのではないか。

 そもそも、性的少数者の権利を守る法整備をすることは、誰かに不利益を与えるわけではない。

 保守派の差別発言の背景にはLGBTなど多様性を認めることに懐疑的な支持者がいることもあろう。ただ、LGBTの権利保護は世界の潮流であり、五輪憲章も性的指向による差別禁止を明記している。東京大会開催を目指す政権党が世界的な理念に反する言動を繰り返しているさまは、日本が差別を容認し、助長していると受け取られることにもなりかねない。