医師の小笠原登(ドキュメンタリー映画「一人になる」の一場面)

医師の小笠原登(ドキュメンタリー映画「一人になる」の一場面)

 ハンセン病の治療に生涯をささげ、時代に先駆けて患者の強制隔離政策に異を唱えた京都大の医師、小笠原登(1888~1970年)のドキュメンタリー映画「一人になる」の公開が4日、京都市下京区の京都シネマで始まった。高橋一郎監督(67)は「コロナ禍で感染者や家族への差別が顕在化している今こそ、国家的規模で患者を排除した問題の深刻さを考えてほしい」と話す。

 小笠原は京都帝国大医科大学を卒業後、京大皮膚科特別研究室で診療に当たった。映画は、公務員としては国の政策に従う義務があるにもかかわらず、患者を強制隔離から守るため診断書の病名欄を空白にするなど、患者に寄り添った孤高の医師の姿を通して「人権とは何か」を問う。

 「(患者や家族の)悲惨の理由は病気そのものの誤解と、これに基づく社会的迫害の上にある」という小笠原の信念と実践について、当時の日誌や滋賀県出身者を含む元患者6人の証言を交えて紹介。本人の自由意思によらない断種や監禁、強制労働が横行していた各地の療養所内の実態や、医学者や宗教教団が国策に加担した歴史にも光を当てる。

 高橋監督の劇場公開映画は4作目。小笠原が晩年に再び暮らした愛知県の実家の圓周(えんしゅう)寺が、老朽化で建て替えられることになったのを機に制作に着手。約2年かけて元患者や教え子にインタビューを重ね、98分の作品に編集した。「同調圧力には屈しない」との思いをタイトルに込めた。俳優の竹下景子さんが語りを務める。

 上映は10日まで。連日午前11時50分から。一般1800円。