食の実態調査の結果と今後の食育方針を示した報告書。早起きをして家族で朝食を取るよう、保護者に周知すると書かれている。

食の実態調査の結果と今後の食育方針を示した報告書。早起きをして家族で朝食を取るよう、保護者に周知すると書かれている。

 京都市教育委員会は3月、中学生や保護者を対象に実施した食生活の実態調査を基に食育方針を打ち出し、子どもと朝食を共にするよう学校側から保護者へ働き掛けると明記した。一方、朝食を食べない保護者の多くが「時間がない」「食欲がない」と回答したにもかかわらず、なぜ時間が取れないのか、共に朝食を取るには何が必要かといった点には言及しなかった。子どもの食を支援する市民らからは「親の病気やひとり親世帯などさまざまな事情を抱える家庭への配慮が足りない」という声が上がっている。

 調査は生徒の食の実態と課題を把握し教育施策に反映する目的で2019年に実施。市立中の生徒と保護者計4千人、中学校73校を対象に食生活や生活全体への充実感、栄養摂取状況など306項目を質問したところ、朝食を食べない、または週に2~3回以上食べないことがある、と答えた保護者は2割近くに上った。市教委は調査結果を基に、食育の指導方針や家庭との連携の在り方を報告書にまとめ、各校に配布した。

 報告書は朝食以外の食事についても言及している。「1人で夕食を食べると答えた生徒は生活が充実していないと答えた割合が高い」とする調査結果を取り上げ、「家族で喫食する機会を持てるよう保護者に働き掛けを行う必要がある」と記した。また「給食や弁当を食べている生徒の方が、市販品を持参する生徒より生活が充実していると回答した割合が高い」というデータを基に、市販品を食べる生徒に昼食の取り方を個別指導すると結論付けた項目もあった。

 これに対し、中京区で子ども食堂を運営するNPO法人ふれあいほうむ“どうぞ”代表で元小学校教諭の小林敬子さん(71)は、家族と食事を共にする大切さは否定しないとした上で、「食生活がぜい弱な家庭は、経済的、時間的余裕がないなど多くは事情を抱えている。『家族と一緒の食事』を一方的に指導しても、できない家庭の子どもや保護者は戸惑うだけだ。孤食を課題と捉えるならその背景にあるものを見てほしい」と話す。

 「結論ありきの調査だった」と批判する識者もいる。岩井八郎京都大名誉教授(教育社会学)は調査の設計や結果の解釈に問題があるとし、「本来、教育行政は調査結果を基に従来方針を問い直すべきだが、報告書では調査前から想定していた家庭の望ましい姿を調査結果に関係なく記した印象だ」と指摘する。

 その上で「生活の充実感には家庭環境などさまざまな要素が関係しており、市販品をやめて給食を食べれば生活が充実するわけではない。なぜ充実感がないのかを分析し、必要な支援を考えるための調査であるべきだった」と強調する。

 文部科学省は「食の正しい知識と習慣を身に付けさせるため」として家庭と連携した食育を推進し、農林水産省も家族との食事の機会を増やすよう呼び掛けている。市教委は報告書について「言葉足らずな部分があったかもしれないが、食育施策については国も同様の方針を以前から示しており、問題はないと考えている」としている。