開幕まで50日を切った東京五輪・パラリンピックを巡り、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が国会で、「今の状況で(大会開催を)やるのは普通はない」と指摘した。

 その上で「パンデミック状況でやるのであれば、開催規模をできるだけ小さくして管理体制をできるだけ強化するのが主催者の義務だ」とも述べた。国内の感染状況に与える影響の分析と説明が必要との考えを示したといえる。

 政府や大会組織委員会は「安心安全の大会にしたい」と繰り返すが、科学的な知見に基づいた開催のリスクを示せていない。専門家の意見を重く受け止めるべきだ。

 政府は、英国で開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明に、五輪開催への支持を盛り込むよう強く求めているという。米国が日本への「渡航中止」を勧告し、海外で東京五輪への懐疑論や中止論が広がる中、主要国の後ろ盾を得て、開催へ弾みを付けるためとみられる。

 ただ、足元の国内世論は開催反対に大きく傾いている。5月中旬の共同通信世論調査では「中止するべきだ」との回答が59・7%に上った。

 現在も10都道府県に緊急事態宣言が出され、医療体制は逼迫(ひっぱく)したままだ。大会ボランティアが約1万人も辞退したのは、感染への不安の表れだろう。

 このような状況下で、今月1日にはソフトボールのオーストラリア代表が事前合宿の第1号として来日した。行動範囲はホテルと練習会場に限られ、PCR検査を毎日受けている。

 政府は大会期間中も、選手やチーム関係者の移動を厳しく制限し、外部との接触を遮断する、と感染対策を強調する。

 しかし、数万人になると見込まれる関係者の行動を細かく把握するのは難しい。

 海外選手らの入国より、国内での人流の方が感染拡大に与える影響が大きいとの試算もある。研究結果をまとめた東京大のチームは、無観客開催やパブリックビューイングの制限など人出を抑制する対策が重要になると訴える。

 政府や組織委は、こうした専門家や医療関係者の意見を踏まえ、五輪開催に伴う影響を厳密に分析し結果を示す必要がある。

 菅義偉首相は「国民の命と健康を守るのが責務で、五輪を優先させることはない」と述べている。その姿勢を、具体的な行動で示してもらいたい。