政府は、職場や大学など職域での新型コロナウイルスワクチン接種を、21日から始める方針を打ち出した。

 国内では、ワクチンを少なくとも1回接種した人が、人口の約8%に当たる1千万人を超えた。

 医療従事者や65歳以上の高齢者が先行し、当面先とみられていた現役世代や若者にも対象が広がれば、接種ペースがさらに加速すると見込まれる。感染拡大の防止や経済活動の正常化につながることが期待できよう。

 ただ、唐突な方針発表で、大学や企業からは具体的な実施方法に戸惑う声も多い。

 政府は、円滑に職域接種が進むよう、現場の状況に合わせて支援することが求められる。

 職場などでの接種は、1会場最低千人程度を基本に、従業員だけでなくその家族や下請け企業、周辺住民も対象に含められる。米モデルナ製ワクチンが使用される。

 伊藤忠商事や明治安田生命保険が21日から接種を開始するという。トヨタ自動車や日本航空なども実施を検討している。

 大学では、京都工芸繊維大や滋賀大など、全国七つの国立大で先行して接種が計画されている。

 実施に向けた大きな課題は、医師や看護師らワクチンの打ち手の確保だ。

 職域接種では、実施する企業や大学が、自前で会場や医療従事者を手配しなければならない。

 従業員千人以上の事業所などは専属の産業医がいるが、多くの中小企業の産業医は非常勤で、選任していない事業所もある。

 医学部のある大学でも、自治体の接種に医師を派遣したり、施設を接種会場として提供したりして、ぎりぎりの状況という。

 政府は、歯科医師のほか救急救命士や臨床検査技師も、打ち手の対象に加えた。担い手を掘り起こし、自治体の接種や地域の医療体制を圧迫しないようにする必要がある。

 接種者情報の管理も重要だ。

 職域接種では、自治体から届く接種券がなくても接種が可能としている。

 他地域から通う従業員や、出身地に住民票がある学生らの重複接種を避けるようにしなければならない。

 同時に、接種を希望しない学生や従業員に対し、圧力や嫌がらせが起きないよう十分配慮したい。

 大学や企業は市町村や保健所と連携、情報共有しながら取り組んでほしい。