オニムでチップをはじいて遊ぶ児童(京都市南区・希望の家児童館)

オニムでチップをはじいて遊ぶ児童(京都市南区・希望の家児童館)

オニム倶楽部の西村さん。オニムの魅力を「幅広い世代が楽しめる」と語る(京都市東山区)

オニム倶楽部の西村さん。オニムの魅力を「幅広い世代が楽しめる」と語る(京都市東山区)

 京都市南区、下京区を中心に、市内の児童館で親しまれているご当地盤上ゲーム「オニム」。ビリヤードとおはじきを組み合わせたような遊びだ。ただ児童館以外ではあまり見かけず、歴史も謎に包まれている。なぜ児童館? 本当に京都だけなの? 調べてみた。

 南区の希望の家児童館。学童保育を利用している児童2人が、90センチ四方の木製「オニム」盤を囲んで遊んでいた。チップと呼ばれる玉を指ではじいて別の玉に当て、四隅のポケットに落として勝敗を競う。チップが狙い通りの道筋をたどると「よしっ」と喜び、近くで見ていた職員も「あっち狙ったら」などとアドバイスして盛り上がる。


 凌風小中5年の男子児童(10)は「友達と話しながら遊べる」と魅力を話し、職員の唄(ばい)裕樹さん(41)も、「卒業生が遊びに来た時、自然と『オニムやろか』となる。コミュニケーションのツールになっている」と話す。


 オニムは同児童館を始め、南区と下京区の児童館で特に活発に遊ばれている。両区では児童館対抗のオニム大会が恒例行事となっている。


 なぜ南区、下京区なのか。オニムの普及活動をする「オニム倶楽部」(東山区)の元事務局長西村秋男さん(75)や児童館職員によると、両区をまたがる京都駅東側周辺ではかつて、ビリヤードのような手作りの盤上ゲームが「とうき盤」(「とうき」はビリヤードを意味する「どうきゅう」がなまったもの)や「玉つき」と呼ばれて楽しまれていた。西村さんは、戦後に進駐軍が持ち込んだビリヤードを住民が模した、と推測する。


 それが地元の児童館で遊びとして取り入れられた。京都駅東側にある希望の家児童館には30年以上前に手作りされた盤が今も残っている。元々、オニムになじみがなかった京都駅西側のエリアでも、児童館の遊びから始まって定着していったとみられる。


 一方、同倶楽部の活動も遊びの継承に大きく関わっている。伏見区出身の西村さんは小さい頃、盤で遊んだ経験がある。20歳で就職後、同僚が休憩時間、盤に興じていることに驚き、「子どもから大人まで楽しめる遊びだ」と感じた。次世代に伝えようと約20年前、オニムと名付けてルールや規格を決め、同倶楽部を立ち上げて児童館などへの普及活動を開始。オニムの名称は自身の子どものあだ名に由来するといい、耳に残りやすい音だったことから決めた。


 同倶楽部は現在、動画投稿サイトなどでオニムのルールや技、楽しみ方を紹介する活動をしている。西村さんは「仲間が集まって夢中になれるゲーム。ぜひ試してほしい」と笑う。


       ◇
 実は同様の遊びが、滋賀県にもある。彦根市のご当地ボードゲーム、カロムだ。カロムとオニムは形態やルールがほぼ同じ。二つは関係があるのだろうか。日本カロム協会(同市)も西村さんも「つながりはないと思う」。カロムはエジプトを起源とし世界のさまざま地域で楽しまれている。日本には明治~大正期に持ち込まれたとみられ、昭和30年代初めは全国にあったが、なぜか今は彦根を中心とする地域にしか残っていないという。同協会の担当者は「歴史については、謎が多い遊びです」。