デジタル改革関連法案や入管難民法改正案など、菅義偉政権が今国会で提案した重要法案でパブリックコメント(意見公募手続き、パブコメ)が実施されず、識者らから「国民の意見を直接聞かなかったのは残念だ」との声が上がっている。

 パブコメは、行政機関などが施策や運営の透明性を確保するために市民の意見を募る制度で、1999年に導入された。

 法案作成段階での実施義務はないが、過去には特定秘密保護法などの重要法案で実施されてきた。今回、デジタル法案などの国会審議は十分といえなかっただけに、国民の意見を直接届ける手段が取られなかったことは残念だ。

 行政手続法では、パブコメは政令や各省庁の省令などを制定する際の実施が義務付けられている。多くの自治体も取り入れている。

 政府が昨年実施した「第5次男女共同参画基本計画」の素案に対しては、5年前の前回に比べ2倍近い約6千件の意見が寄せられた。

 その多くは10~20歳代からで、男女平等の推進策や性暴力対策、夫婦別姓の実現を求める声が多く、一部は最終案に反映されることになった。

 多様な意見を政策に取り入れる制度として、パブコメが期待される役割は大きい。

 一方で、恣意(しい)的ともいえる運用も目立つ。問題点の一つは、本来は30日以上の募集期間を政府の都合で短縮できる規定だ。

 農林水産省が今年4月29日に決定した「みどりの食料システム戦略中間取りまとめ」についてのパブコメは、募集期間がわずか2週間だった。

 寄せられた意見は公表しなければならないが、政策に反映する義務がないことも疑問だ。

 国の第4次エネルギー基本計画の策定過程(2014年)では、90%以上の意見が原発に否定的だったが、計画は最終的に原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。

 法案の成立を前提に、運用の規則や方針などにパブコメを募った場合、法案自体への意見が無視されることもある。

 統合型リゾート施設(IR)の選定方針を巡るパブコメではIR整備が前提だったため「カジノ反対」などの意見が政策につながることはなかった。

 パブコメ制度は形骸化しているようにもみえる。

 英国では意見を募る際、政策に関係する全ての団体に直接働きかける仕組みがある。政策担当者は、特に社会的弱者が意見を提出できるように配慮する義務があるという。

 意見募集の期間も原則12週間で、公聴会などとの組みあわせも実施されている。

 米国でもパブコメが少数者の意見もすくい上げる制度として定着している。

 日本でも、法案段階からのパブコメ導入を検討するなど、民主主義を補完するシステムとして位置づけ直す必要があるのではないか。多様な意見を政策に反映させる制度として、さらに改善を図る必要がある。