大国間の軍拡競争の一翼を日本が担う-。そんな懸念がいっそう強まらないだろうか。

 ミサイル防衛網の強化に向け、日米両政府が米海軍イージス艦に搭載する新型レーダーを共同開発する方向で調整中だという。

 中国やロシアが開発を進める新型兵器に対抗するのが目的だ。

 日米の安全保障分野での一体化がさらに進むばかりか、中ロのさらなる軍備増強を招く可能性もある。自らの安全を強化するための競争がかえって地域の安全を脅かしかねないことを、関係各国は改めて認識し直す必要がある。

 共同で開発されるのは、イージス艦の低空監視に使われるレーダーで、四方に固定して常に全方位を監視できるようにするという。現行のレーダーは、回転させて警戒する方式のため、死角が生じて探知が遅れると指摘されていた。

 イージス艦は、敵の航空機やミサイルなどの情報を探知し、瞬時に処理して対処する役割が期待されている。遠方監視を得意とする半面、低空を飛ぶ近距離攻撃には弱いとされる。今回の共同開発はそれへの対応の一環とみられ、将来的には、海上自衛隊のイージス艦への搭載も検討されるという。

 ただ、開発、配備には多額の費用がかかる。米海軍が最近、メーカーと契約した現行型のレーダーでさえ5基で約23億6千万円だった。新型ともなれば、さらに高額となる可能性がある。

 ミサイル攻撃への対応では、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」2基の導入が決まっている。防衛費の伸びが突出する中で矢継ぎ早に新装備を求めるなら、十分な説明を尽くすべきだ。

 共同開発の背景には米国とロシアが中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄に進み、双方のミサイル実験が加速しそうな情勢がある。

 米国はレーダーにとどまらず極超音速ミサイルなど攻撃用の新型兵器開発も急いでいる。INF条約が失効する見通しの8月に発射実験に踏み切るとの予測がある。

 周辺国からの脅威を理由に、日本に対してさらなる共同開発や装備購入を求めてくる懸念がある。日本がミサイル防衛網の拠点となることは避けなければならない。

 気になるのは、防衛省が敵の射程圏外から艦艇を攻撃できる長距離巡航ミサイルを初めて開発する方針を固めたことだ。中国海軍艦艇の能力向上をふまえた対応というが、米中のにらみ合いに進んで関わることにならないか。専守防衛の観点からも疑問がわく。