パワーハラスメント(パワハラ)を許さない企業の姿勢が改めて問われている。

 トヨタ自動車が、男性社員=当時(28)=の自殺と上司のパワハラとの因果関係を認め、遺族側と和解したことが分かった。豊田章男社長が直接謝罪し、解決金を支払ったという。

 社内の問題点を点検し、再発防止策に実効性を持たせられるかが重要だ。

 遺族側の弁護士によると、男性社員は高圧的な上司から「なめてんのか」「死んだ方がいい」などの罵詈(ばり)雑言を浴び、学歴も侮辱された。一時休職したが、復職後も再び同じ上司と働くことになった。状況は改善されず、2017年10月に自ら命を絶った。

 労働基準監督署がパワハラによる症状と自殺の因果関係を認め、労災認定したのが19年9月。その報道で豊田社長は事態を知ったという。社内での情報共有がなかったことを物語っていよう。

 パワハラが疑われる上司に対して上位者から何らかの働き掛けができず、復職後の配属にも配慮がなかった点も教訓とせねばなるまい。

 電通や三菱電機でもパワハラが若手社員を追い込むケースがあり、問題の根は深い。

 昨年6月、パワハラ防止策を義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法が大企業から施行された。相談に応じ、事実確認した上で被害者を守り、行為者には厳正に対処することが責務となった。

 ただ、パワハラと通常業務の指導との線引きは曖昧で、罰則規定がないことも疑問視されている。

 厚生労働省が昨秋に行った調査では、過去3年間にパワハラを経験した人が31%にのぼった一方、勤務先の対応は「特に何もしなかった」が47%を占めた。

 パワハラの弊害や対策の必要性が企業側に十分に認知されていない。さらなる周知が必要だ。

 同規制法は来年4月から中小企業も対象とする。その約6割が義務化を知らず、対策を講じているのは35%にすぎないという民間調査もある。

 就業規則を改定し、相談窓口で外部の専門機関と提携するなど、具体的な取り組みを進める上での支援も必要だ。

 トヨタが打ち出した再発防止策は、就業規則で懲罰規定を明確にし、課題の早期発見のため若手社員に毎月のアンケートを実施する。産業医と人事労務スタッフ、職場が緊密に連携するとした。

 他の企業も参考にできるのではないか。