特殊詐欺の手口の一つだった「アポ電(アポイントメント電話)」が、痛ましい凶悪事件へ発展してしまった。

 東京都江東区の80歳女性強盗殺人事件で男3人が逮捕された。事件前、現金の有無を電話で尋ね、資産状況を確認した上で押し入ったとみられる。

 都内では多額の現金のある高齢者宅を狙った類似の事件が起きている。男らは特殊詐欺の「犯行ツール」と呼ばれる他人名義の携帯電話も所持していた。警視庁は、全容解明に全力を挙げてほしい。

 アポ電は、振り込め詐欺グループなどが高齢者らの個人情報を調べる目的で事前にかけるものだ。果物や品物を送ることを口実にするなどさまざまな手口がある。

 警察官を名乗り「預金を複数口座に分けた方が安全だ」と持ち掛け資産額を聞いたり、消防署員を装い「災害時の救助のために名簿を作っている」と家族構成を尋ねたりする例もある。

 アポ電で狙いを定め、押し入る。手っ取り早く現金を手に入れるため、犯行が荒っぽくなっていることが気がかりだ。手口や話術の巧妙さだけでなく、危害を加えたり、拘束したりするなど凶悪化していることに憤りを感じる。

 警視庁が都内で昨年確認したアポ電の件数は約3万4千件で前年から急増した。京都府内でアポ電を含む不審電話は前年より少ない2418件だったが、府警はこの数字は氷山の一角で実際にはもっと多いとみている。

 電話を使った特殊詐欺の被害者は65歳以上に集中し、対策が急がれる。在宅時でも常に留守番電話にしておき、相手を確認して必要があれば電話をかけ直すよう警察は呼び掛けている。念には念を入れて一人一人が用心すべきだ。

 ただ警戒心を強くするあまり高齢者を孤立させないようにしたい。住宅巡回での注意喚起や最新手口の情報共有に努め、地域の防犯力を高めることが求められる。

 アポ電対策で大切なのは犯人側に安易に個人情報を教えないことだ。家族を名乗る不審な電話があったら、いったん切って親族や警察にまず相談する。あらかじめ身内だけが分かる合言葉を決めておくことも有効だろう。

 相手の番号を表示できる電話機や、会話を自動録音できる機器もある。無料で貸し出すなどの取り組みは京滋など全国で広がっており、さらに拡充させたい。関係機関が連携し、あらゆる手段を講じて被害を防ぐことが重要だ。