秋の本番前に北太平洋公海で7月まで行われる「初夏のサンマ漁」が、昨年に続き出漁ゼロとなる見通しが強い。漁獲が見込めないためという。

 養殖を除いた漁獲量は減少傾向が止まらず、2019年は14年に比べて全魚種で13%減っている。特に人気のあるサンマやスルメイカ、サケ類の3魚種合計では74%も落ち込んでおり、私たちの食卓にも影響が及んでいる。

 長引く不漁問題にどう向き合うべきか。先週、水産庁の有識者検討会が不漁の要因分析を踏まえて、中長期的な施策の方向性をまとめており、目を向けたい。

 漁業に大きな変化をもたらしているのは、地球温暖化による海水温の上昇や海流の変動であり、予測のつかないリスクという。卵のふ化や稚魚の成育に影響し、魚の分布域の移動で、漁獲する魚種は変化し減少する恐れもある。

 これまでの経験や知見が通用しにくいのが現状だ。検討会は、漁業の継続のためには環境変化に対する弾力性が必要だという。たとえば、サンマ漁船がマイワシを漁獲する実例を挙げ、漁獲する魚種や漁法を複数に広げる「多目的船舶」を提示している。

 一つの漁業資源に頼らない観点が重要だ。漁業者同士の協業、養殖との兼業、加工など事業の多角化で、柔軟に収入を得られる漁業経営へ転換を促すべきとする。

 漁船についても、温暖化対策として燃料油の使用を減らし、電化や水素活用を進める支援策を要請している。

 今月閣議決定した「令和2年度水産白書」でも、水産業の新しい方向を特集している。顧客のニーズをくみ取った発想を奨励し、事例として滋賀県の水産関係者らによる試みを紹介している。

 琵琶湖の固有種ビワマスは、多くが特定の取引先で販売されてきたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で値段が下落した。そこで任意団体「琵琶湖の水産業を本気で何とかする会」を立ち上げ、インターネットを通じて協力者を得て販売を強化、高品質冷凍商品を開発し、前年の3倍以上の販売を達成したという。

 各地でさまざまな取り組みが始まっている。情報共有のシステムを構築すれば、ネット時代らしい応援が広がるのではないか。

 温暖化だけでなく、諸外国を含めた魚の乱獲も大きな問題だ。海の恵みを守るためにも、持続可能な漁業のあり方に関心を寄せる必要があるだろう。