主人公は小学一年生の"はるこ"
この物語は、小さなはるこが祇園祭を通して出会う人々との交流と、ちょっぴり不思議な出来事を描く、ひと夏の物語です。


7月12日

 

町のあちこちに山鉾がたち、あっちの通りにも、こっちの通りにも、おおきくてりっぱな山鉾が見えます。見物のお客さんもふえてきて、ふるまい酒や、つめたいお茶をだすお店がでてきました。


今日は「曳き初め」の日。
「曳き初め」は、だれでも鉾をひっぱることができる、人気の行事のひとつです。


はるこはきょねん初めて、お母さんと一緒に行きました。ことしは、お母さんはおうちでまっています。「にんぷさんやからね」と、はるこはそっと言いました。


「はるちゃん、いこう!」
おなじマンションに住むうみこさんがさそいにきてくれました。ゆきちゃんも一緒です。
「ことしもたくさん、きてはりそうやね」とうみこさん。
「うん!」はるこは、えがおで答えます。
お天気はうすぐもり。じわーっとあつい、京都ならではのお天気です。

「オーイ! うみこさーん!」

通りのまんなかで、うみこさんのボーイフレンドの、リュカさんが手をふっています。
とっても背が高いリュカさんは、よく目立ちます。「はるちゃんとゆきちゃんを迷子にしたらあかんから」と、うみこさんがよんでいたのです。

リュカさんは、まいとし木賊山の舁き子をしているのですが、今年はこしがいたくって、
おうえんにまわるとのこと。
(理由は登場人物紹介ページをごらんくださいね!) 
「こしをいれてグイッとひくんですよ。」リュカさんは、はることゆきちゃんにアドバイスしてくれました。

「さあさあ、みなさん、ならんでや。これが綱。おもたいでぇ!」
いつもはお寿司屋さんではたらくおにいさんが、おおきくて、よくとおる声でみんなに呼びかけました。祭の保存会の一員でもあるおにいさん。キリッと祭のかおをしています。

3人は、いろんな人にまじって、ふとい綱をもちました。
おにいさんの声にあわせて、みんないっせいに……


「よーい! えんやらやー!」


ひっぱります!


みんなをおうえんするように、祇園囃子ももりたてます。
ぎっしぎしと ゆっくり ゆっくり、前にすすむ おおきな山鉾……!
見物客は はくしゅかっさい!
「すごいすごい! こんなにおおきいのに、みんなでひいたら  うごくんやねえ。」
おでこに汗をひからせて、うみこさんが笑います。

「よーい! よーーーーい! えんやらやー!」

大人もこどもも、あの人もこの人も、いつもとすっかり、ちがうかお。
えがおが夏の日にてらされて、キラキラとしています。

「あーあ、えらい汗かいて。ほら、かき氷たべよしや。」
着物のそでをまくりあげて、タケマルじいちゃんと、タケマルばあちゃんが、みんなにかき氷をふるまってくれました。
「うちメロン!」ゆきちゃんが元気よく答えます。はるこはいちご味。うみこさんはレモン味です。そして、リュカさんは……

「ぜんぶやろ」とウィンクするタケマルばあちゃん。きょねんもそうオーダーしたのを、ちゃあんとおぼえていたのです。「フウ!」かおいっぱいをえがおにして、リュカさんはカラフルなかき氷をうけとりました。


「いただきまーす!」

 

……そのときです。

カロン!

はるこの耳に、聞いたことのない音が聞こえてきました。
「ゆきちゃん、この音なに?」

カラン!

「ほら! この音! うみこさんも聞こえるやろ?」
「ううん。なんも聞こえへん。どないしたん、はるちゃん」


カリン!


すずやかで、ちょっとだけぶわあんと耳にひびく音。しかも上から聞こえてきます。はるこはぐるっと空を見ました。まっすぐにのびる鉾が見えるくらいで、ほかにはだれもいません。
「はるちゃん、はよ食べな、氷がとけるで」
「うん……」


いったい、なんの音でしょう。
シャコシャコシャコ。いちご味のかき氷をスプーンでくずしながら、はるこは、なんどもなんども空を見上げるのでした。


<つづく>

 

物語の舞台となっている、京都市の中心部。リアルな町の景色と、制作裏話をちょこっとご紹介していきます。

 

2つの顔を持つ7月1日〜31日の1ヶ月に渡る京都のお祭りです。
祇園祭に登場する、お神輿や山鉾についてちょこっと学びましょう!


お神輿
 

 

3基あります。それぞれに違う神様が乗ります。

①中御座(なかござ)
 八坂神社の神様 須佐之男命(すさのおのみこと)
②東御座(ひがしござ)
 須佐之男命の妻、櫛稲田姫命(くしなだひめのみこと)
③西御座(にしござ)
 8人の子どもたち八柱御子神(やはしらのみこがみ)


山鉾

 

「やまほこ」と読みます。
山車(だし)の一種。屋台の上に山や、木、人形などの造物(つくりもの)が飾られているのが山。背が高く、長刀(なぎなた)などの鉾頭(ほこがしら)を立てたものが鉾。山鉾は、人にとって悪さをするものを、町中から集める役割があります。


山鉾は5種類あります

鉾(ほこ)上記イラスト

山(やま)

 

曳山(ひきやま)

 

傘鉾(かさほこ)

 

船鉾(ふねほこ)

 

この5種類の山鉾建てが町中で行われます。とても大きな鉾は高さが25m(マンションの8階ほど) 重さ2t! それらを釘を一本も使わず、建ててしまうんですね〜。

 

車道に山鉾が建っていきます。巡行の時には、飾りがついていて見えない部分、伝統技法“縄がらみ”も見ることができます。ギチギチに巻いてると思いきや、絶妙な力加減で、柔らかく結ばれています。ギチギチに巻くと、動く時に背の高い鉾の大きなしなりによって木が折れてしまうんだとか。

 

八坂神社から四条通りを西へ歩いて5分程にある、「祗園祭ぎゃらりぃ」では、原寸の鉾のレプリカに触れることができます! 縄がらみも、ぜひ触ってみてくださいね。

祇園祭ぎゃらりぃ
〒605-0074 京都市東山区祇園町南側551
https://gionmatsuri-g.com/
詳しくは、ウェブサイトをチェック!

 

曳き初め(ひきぞめ)。小さなこどもも楽しめます。参加は誰でも可能。
(写真は2015年頃の様子)


いつもの町に、鉾がたち並びはじめるとわくわくしますね。曳き初めは山鉾によって実施する日が違うので、いくつか回っても良いですね!