主人公は小学一年生の"はるこ"
この物語は、小さなはるこが祇園祭を通して出会う人々との交流と、ちょっぴり不思議な出来事を描く、ひと夏の物語です。


7月14日


宵山が始まりました!

 

「お姉ちゃんの生まれた町はな、厄除のちまきと、安産のはらおびをおわたしするねんよ。はるちゃんもいっしょにしいひん?」

かみをゆいあげ、あざやかなぼたんの花をちらした浴衣をきて、うみこさんが、〝ちまきうり〟にはるこをさそってくれました。


「厄除のちまきどうですかぁ!」


元気なこどもたちの声に、道ゆく人も足をとめます。
いちばん大きな声は、ゆきちゃんです。


「どおですかあああ!」


はるこも、ゆきちゃんと同じくらいの声を出そうとがんばりますが、やっぱりちょっとはずかしくって……
「……ちまき、どうですか……」
なかなか、おおきな声が出せません。

「はるちゃん! つぎ、いっしょにゆお。 そしたら はずかしないし」 ゆきちゃんがにぃっと笑います。
「うん!」
「せーの」


「厄除のちまき、どおですかあああぁあ!」

出ました! おおきな声!


「おじょうちゃんたち、元気やねえ、ひとつちょうだい!」
おばちゃんがもらってくれました。
「よかったねえ!」と うみこさん。

 

つつんだちまきを、うみこさんがていねいにわたします。
その仕草が、うっとりするきれいさで、はるこは思わずみとれてしまいます。
ちまきは、来年の夏まで、だいじに家のげんかんにかざられます。
みんなが、元気で一年すごせますように。

「はい、はるちゃん!」
うみこさんが、はらおび をわたしてくれました。
「〝はらおび〟はね、おなかのなかの赤ちゃんを、しっかり守ってくれるんよ」
はるこはきゅうに、むねがいっぱいになりました。


「あんな、お母さんな、ときどきしんどいんやって。  はらおび、お母さんのことも、守ってくれるやろか」
ちいさな声できくはるこに、うみこさんは、しゃがんで、目を合わせて、答えてくれました。


「うん。守ってくれはるわ」


それから、はるこのほほを両手でつつんで「そんなかお しいひんの」と、言いました。
「お姉ちゃんもおねがいしてんよ。リュカさんのこしがいたいの、早くなおりますようにって」
はるこは、ふふっと笑いました。うみこさんも、ふふふっと笑いました。


どこかから、こどもたちの歌声がきこえます。

「あんざんの おまもりは これよりでます
ごしんじんの おんかたさまは 
うけておかえりなされましょう
ろうそくいっちょう けんじられましょう」 

みんな、元気ですごせますように。

<つづく> 
 

 

祇園祭 厄除ちまき

 

これは、食べられないちまきです! 祇園祭の厄除ちまきは、持ち帰って家の玄関に吊るして、1年間の厄除と安寧を祈願します。全てに「蘇民将来子孫成(そみんしょうらい しそんなり)」と書かれたお札が付き、各山鉾町のご利益にちなんだお守りや、飾り付けがされています。1年後、各山鉾町にお返しして、新しい厄除ちまきの授与を受けます。京都の家の玄関の上の方見ると、かなりの確率で飾っている家があります。

 

厄除ちまき授与と、こどもたちが歌う童歌(わらべうた)がセットになった山鉾町もあり、祇園祭の宵山の景色に花を添えます。こどもの声で「ちまきどうですか〜」と言われると、可愛くて、ついついもう一本もう一本と数が増えてしまいます……。厄除ちまきは、何本飾ってもご利益は損なわれないらしいですよ。


厄除ちまきに欠かせない、チマキザサが大ピンチ 

 

昔は祗園祭の厄除ちまきの材料は、すべて京都産でした。しかし今は、ほぼゼロ! チマキザサは60年に一回花が咲いて枯れると言われています。咲いた花の実から種が落ち、新しい赤ちゃんの芽が生え、10年でまた立派な葉が育ちます。しかし、今、京都の山では鹿がたくさん増え、チマキザサの赤ちゃんの芽を次々と食べてしまい、チマキザサがまったく採れなくなってしまいました。


もう一度、京都のチマキザサを元気にしよう 

 

チマキザサのピンチを救うため、チマキザサを鹿から守る活動をしている、「チマキザサ再生委員会」の方達。もう一度、元気なチマキザサを、京都にとりもどそうと日々頑張っておられます。


あって当たり前! と思っている「厄除ちまき」。現状は厳しい側面もたくさん。神様に守っていただくためにも、私たち一人一人が足元の環境のことをもっとよく知っていかなければいけませんね。


京都の家々に何気なく飾られている「厄除ちまき」の材料のこと知ってましたか?有り難く、大切にしたいですね。