母の原田美鈴さんとおどける萌立君。医療的ケアが欠かせない(2019年、京都市南区)

母の原田美鈴さんとおどける萌立君。医療的ケアが欠かせない(2019年、京都市南区)

 たんの吸引や人工呼吸器など医療的なケアが必要な子どもとその家族を支援するための「医療的ケア児」支援法案が11日、参議院本会議で可決・成立した。たん吸引や酸素吸入が常時必要な小学生の母、原田美鈴さん(京都市南区)は「医療的ケア児を受け入れようとしてくれているのは一歩前進だけど、支援法ができても、がらっとは変わらないと思う」と話す。

 原田さんの三男萌立(ほだか)君(8)は京都市内の小学校に通う3年生。生後6カ月の時の心臓手術で気管切開し、吸引や酸素吸入が常時必要で、小学校入学時は原田さんが付き添い、放課後の学童クラブ(学童保育)も受け入れてくれなかった。粘り強い交渉で、学校や学童クラブはそれぞれ看護師を配置したが、朝の学校への送りは今も毎日、原田さんが付き添う。

 注入や水分補給の機器を抱えての付き添いは「荷物が多くて、雨の日は大変。児童館や放課後デイサービスからの帰宅時は訪問看護師らが付き添ってくれるけれど、学校は萌立のケアに慣れた訪問看護師さんが関われないからと言われて」と原田さんは打ち明ける。送迎時の保護者負担は全国の医療的ケア児の保護者から悲痛な声があった。成立した支援法は切れ目のないケアをうたうが、現実は、教育と在宅福祉の間に縦割り行政の壁がある。

 京都市子ども家庭支援課によると、市内の医療的ケア児は、就学前を含めて、およそ150~200人とみられるという。市は2019年に「障害のある児童に係る実態把握」を公表しているが、放課後デイサービス事業所の8割が、医療的ケア児や重症心身障害児の受け入れは困難だと回答し、その半数は「支援のノウハウがない」ことを理由に挙げた。送迎の困難を挙げる事業所も目立った。

 萌立君は多い時は1時間ごとに、たん吸引が必要で、食事は経管栄養。カニューレの扱いなどケア手順は、原田さんが学校に通って看護師に教えねばならない。夏休みの過ごし方も含め、保護者が子どもの医療的ケアと付き添い負担に縛られず、働くにはまだまだ壁がある。

 医療的ケア児が多く通う空の鳥幼児園(伏見区)園長の平田義さんは「医療ケア児の支援は地域格差が大きかった。どこでも必要な支援が受けられるのは喜ばしい」と法成立を評価しつつも、「支援法は看護師の学校配置が強調されているが、看護師不足に縛られてしまうのではないか」と懸念を示す。

 その上で「医療的ケアは、研修を受けたヘルパーら福祉職でも担える。医療的ケア児に関わり、支える人の裾野が増えることが望まれる」と指摘する。