菅義偉首相

菅義偉首相

 9日の党首討論で、72歳の菅義偉首相が1964年の東京五輪の思い出話をとうとうと語ったことが話題になった。「場にふさわしくない」「話が長い」。その多くは批判的な論調だ。永田町や政治記者の視点だと、そうなるのだろう。

 討論時間に限りがある中で確かに冗長過ぎた面はあったと思う。立憲民主党の枝野幸男代表の質問とはかみ合わない答えだった。

 しかし、運動記者として取材を続けてきた私には、「東洋の魔女」や「はだしのアベベ」を見た体験を首相が話すのは意外だった。64年大会で初めて「パラリンピック」の名称が使われた障害者スポーツにまで言及している。

 予算委員会や記者会見では事務方が作ったペーパーをにべもなく読み上げるだけの首相の口から、自らの言葉が発せられただけでも、2年ぶりの党首討論を開いた意味はあったのではないかと思う。

 一方、枝野代表もいつもと違う顔を見せた。弁舌鋭く相手をやり込めるのではなく、甲高い声を抑え、早口にならないようにしていた。「迫力がなかった」「枝野さんらしくない」という他党議員の評にうなずく部分はあるが、当の本人は「リーダーが感情的になったら国の方針を傾ける」と脱皮を図っているようだ。

 ただ党首討論全体に盛り上がりを欠き、知り合いのベテランジャーナリストは「最低最悪の党首討論だった」と酷評した。時間が45分しかなく、少数党3党首の持ち時間はわずか5分。議論が深まるようなやり方を、国会でぜひ考えてもらいたい。