養護教諭として着任した曺さん(京都市伏見区・京都朝鮮初級学校の保健室)

養護教諭として着任した曺さん(京都市伏見区・京都朝鮮初級学校の保健室)

「アンニョンハセヨ-」。校舎の玄関で登校する児童を迎える曺さん(京都市伏見区・京都朝鮮初級学校)

「アンニョンハセヨ-」。校舎の玄関で登校する児童を迎える曺さん(京都市伏見区・京都朝鮮初級学校)

休み時間、児童に話し掛ける曺さん(左)。子どもたちの様子を見るため、積極的に保健室から出る(京都市伏見区・京都朝鮮初級学校)

休み時間、児童に話し掛ける曺さん(左)。子どもたちの様子を見るため、積極的に保健室から出る(京都市伏見区・京都朝鮮初級学校)

 京都朝鮮初級学校(京都市伏見区)に今年4月、1946年の開校以来初めてとなる常勤の養護教諭が初めて着任した。公的補助が乏しい朝鮮学校では、養護教諭の存在自体が珍しく、全国でも「常勤」は約15年ぶりとなる。新人教諭が「保健室の先生」を志したきっかけは、12年前に京都で起こった朝鮮学校へのヘイトクライム(憎悪犯罪)だった。

■聞くに堪えない暴言、ユーチューブで閲覧

 「アンニョンハセヨ(おはよう)」。登校してきた児童たちに、養護教諭の曺元実(チョ・ウォンシル)さん(27)=京都市=が玄関で声をかける。体調が悪そうな子や、暗い表情の子はいないかを確認するための日課だ。

 曺さんは、岐阜県出身の在日コリアン3世。昨年まで愛知県の病院に看護師として勤めていた。養護教諭になったきっかけは、2009年12月、「在日特権を許さない市民の会」が、京都朝鮮第一初級学校(京都市南区=現在は統合し、京都朝鮮初級学校)を襲撃した事件だった。

 当時15歳の曺さんは、一部始終を映した動画を母とユーチューブで見た。「スパイの子ども」「ゴキブリ朝鮮人」-。聞くに堪えない暴言が心をえぐった。

■自身も差別を受けた経験が

 曺さんも、朝鮮学校にチョゴリを着て通学中、車に乗った男性から唐突に「死ね、バカ」と言われた経験があった。でも、京都の事件は「人間が人間にかける言葉ではない」。動画は見られなくなった。

 京都朝鮮第一初級学校には当時、心のケアをする教員がおらず、夜泣きをするなど「心の傷」を受けた子が多かったとも聞いた。「相当つらかっただろうな」。いつか、子どもたちの力になりたいと強く思った。

■「差別にさらされ、気持ちを押し殺しているのでは」

 7年後、看護師になった曺さんは、朝鮮学校への高校無償化適用を訴える署名活動に加わるようになっていた。在日コリアンの若者が「お願いします」と連呼する前を、知らん顔で通過する人々。皆と同じ権利を求めているのに、なぜ低姿勢でお願いばかりするのだろう。

 「在日コリアンの若者は、幼い頃から差別にさらされ、つらくても気持ちを押し殺す生き方を身につけているのでは」。子どもたちに向き合い、自分を大切にする心を育てたい。朝鮮学校の保健室で働こうと心が定まった。

 看護師の曺さんは、学校現場での実習などをすれば、養護教諭の国家資格を取れる。選んだ実習先は、京都朝鮮初級学校。昨年10月、曺さんは京都へ向かった。