東京五輪・パラリンピックの観客に関し、政府が上限を1万人とする方向で検討しているという。

 東京都、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)などとの5者で来週にも決定する。

 新型コロナウイルス対策の一環で、政府は緊急事態宣言を解除した後のスポーツ大会など大規模イベントの実施について、「定員の50%以内であれば観客上限は1万人」とする方針を打ち出した。

 方針は政府のコロナ対策分科会に示され、了承されたが、分科会メンバーは1万人の上限は五輪の観客の議論と関係ないことを政府に確認したとしている。

 だが、西村康稔経済再生担当相は五輪の観客数について「国内イベントの上限規制に準じる」とも語った。この基準を踏まえ、五輪の観客上限を決めるとみられる。

 観客を入れる場合の感染リスクの検討が進んでいないのに、「観客あり」の前提で議論がなされていることに深い危惧を覚える。科学的な根拠を示すべきだ。

 緊急事態宣言下で行われる大規模イベントは「定員の50%以内かつ5千人以下で、どちらか少ない方」との制限が設けられている。

 今回の政府方針を、西村氏は、宣言が解除された場合に許容される観客の上限が一気に拡大しないための経過措置、と説明する。

 五輪開催へ世論の反発が収まらない中、五輪の観客数について新たな枠を決めるのは難しい。分科会が了承した経過措置にのっとる形なら、批判を避けることができる-と考えたようにも見える。

 しかし、専門家は厳しい見通しを示す。厚生労働省に助言する専門家組織の会合では、有観客で開催すると無観客の場合に比べ感染者の累計が大幅に増える可能性があるとの試算が報告された。

 政府分科会の尾身茂会長らも、無観客での開催が最も感染リスクが小さく、観客を入れるなら現行の大規模イベントより厳しくすべきとの提言を公表する見通しだ。

 五輪は他のイベントと比べて規模が大きく、東京周辺の複数の会場で同時に競技が行われる。より厳しい備えをするのは当然だ。

 こうした専門家の見解をどう評価し、感染対策として何をするのか。最も重要な説明を、政府はいまだ明確にしていない。

 有観客での開催方針が、なし崩し的に進んでいる。こうした政府や大会関係者の姿勢に国民が不安と不信感を抱いていることを、菅義偉首相や大会関係者は深く認識しなくてはならない。