新型コロナウイルス流行の長期化による巣ごもり生活が、インターネットを使った消費を後押ししているようだ。

 2021年版消費者白書によると、インターネットを利用した支出額は昨年、全年齢層で増加した。

 これに伴って、ネットを経由した通信販売に関するトラブルも増えている。

 「お試し」で申し込んだつもりが、いつのまにか「定期購入契約」を結ばされていたなどの相談は約6万件に上り、過去最多を更新した。

 そうした詐欺的な定期購入の取引に対し、厳罰化などを盛り込んだ改正特定商取引法が、先の国会で成立した。

 画面に不適切な内容を表示して契約させた事業者に対しては行政処分を経ずに罰金を科し、解約を妨害する行為を禁じた。申し込みの取り消しができる制度も創設した。

 被害を防ぐ新たな手だてといえるだろう。

 ただ、改正法には見過ごせない問題もある。

 事業者が交付しなければならない契約書面などを電子化し、メールでの送付などを認める内容が盛り込まれていることだ。

 パソコンやスマートフォンなどの電子機器に不慣れな高齢者が、悪質業者の標的になりかねないとして、消費者団体などが批判している。

 団体などは、メールを送られても見落としたり、うっかり削除したりする可能性があると指摘する。スマートフォンの画面や電子化された文面の文字が小さく確認しにくいことや、改ざんや漏えい、機器のトラブルによる消失の可能性も訴える。

 紙の契約書であれば、家族や周囲の人が目にして悪徳商法の被害に遭っていることを察知しやすいが、メールなどでは気付きにくくなり、契約後に無条件で解約ができるクーリングオフの期間を経過してしまう恐れも懸念される。

 消費者庁は、電子化の承諾を書面で得ることや、高齢者が契約する場合に第三者を承諾に関与させることなどの対策を検討しているとする。だが、具体的な被害防止の対応策はこれから政省令で定めるという。

 書面で承諾を得るのなら、そもそも契約書を紙で渡せばいいように思える。何のための電子化か、目的が見えない。

 もともと消費者庁は、契約書面の電子化には反対の立場だった。ところが、唐突に条件付きで可能とする条項を改正法案に盛り込んだ。政府の規制改革推進会議で事業者から電子化を求める声が上がったためとみられる。

 デジタル化の推進は、菅義偉政権の看板政策の一つだ。それを優先するあまり、消費者の保護がおそろかにされてはなるまい。

 さまざまな分野でデジタル化が広がる中、消費者の利益を守れるかどうかが問われている。

 契約書の電子化を巡っては、高齢者の実態に即した対策が求められる。

 来年4月から、成人年齢が18歳に引き下げられる。社会経験の乏しい若者の保護も課題だ。

 消費者庁は常に消費者の目線で施策を検討してもらいたい。