殺人事件ではなかった可能性が極めて高くなった。

 東近江市の湖東記念病院に勤務中、人工呼吸器を外し患者を殺害したとして有罪になった元看護助手西山美香さん(39)の裁判のやり直し(再審)が、最高裁で確定した。大津地裁で再び開かれる公判で無罪となる見込みだ。

 西山さんは、自白を強要されたとして無実を訴えながら2017年8月末まで12年間、服役した。失われた時間はあまりにも長い。

 虚偽自白に頼った滋賀県警と大津地検、それを見抜けなかった裁判所の責任は重い。一日も早く名誉回復を実現すべきだ。

 西山さんは2004年、事故を装って人工呼吸器のチューブを抜き患者を殺害したとして逮捕、起訴された。捜査段階の自白を公判では否認したが、07年に最高裁で有罪が確定していた。

 2度目の再審請求を大阪高裁が17年12月に認めた。決め手は弁護団が提出した新証拠だ。

 患者は呼吸器外しによる窒息死ではなく、不整脈で病死した可能性を示す医師の意見書などで、高裁は「患者は自然死した可能性がある」と判断した。

 自白についても「警察官、検察官の誘導に迎合したにすぎない可能性」を指摘した。最高裁は高裁判断を支持し、検察の特別抗告を棄却した。

 自白は信用できず、当初の死因鑑定も間違っていた。なぜ、こんなずさんな捜査が続けられたのだろうか。

 患者は高齢なのに、捜査側は病死の可能性を探ろうとしなかった。警察は司法解剖した医師に「チューブが外れていた」という未確定情報を伝え、医師はそれを前提に死因を窒息死と鑑定した。

 警察が「事件」の構図に執着しすぎたため、自白を強要することになったのではないか。

 弁護団は、西山さんが取り調べで捜査官に迎合してうその供述をしてしまった、と指摘している。取り調べの可視化だけでなく、弁護士の立ち会いも制度化する必要がある。

 新証拠もないのに特別抗告した検察の姿勢も極めて問題だ。特別抗告は本来、憲法違反などの疑いがあるといった理由が前提となる。再審開始の引き延ばしが狙いだったと言わざるをえない。

 今回の決定は、DNA判定などがなくても再審の道が開かれる可能性を示した。「疑わしい場合は被告人の利益に」という原則を重視したことも歓迎したい。