■大人への感染防ぐ意義も

 ―新型コロナは高齢者ほど重症化しやすいとされている。12~15歳の子どもが接種する意味は。

 「確かに国内で10代以下の死者は確認されていない。そのため医学的には子ども自身の健康より、周りの大人への感染を防いで守る意義が強いと言える。また社会的には、休校など教育の機会損失、遊びや人との交流が制限されることによる精神面への影響を防ぐ効果が期待できる。接種を受けるかは、家族に高齢者がいるかといった点や学校生活とのバランスを考えて判断すればよいと思う。日本人への接種が進み、安全性に関する知見が増えるのを待つという選択肢もある」

 「新型コロナウイルスは、大多数がワクチン接種を受けるか、感染して免疫を持つかしない限り、収束する可能性は極めて低いとされている。今は世界的にワクチン接種を広げて社会生活を取り戻そうという流れだ。子どもへの接種を巡る議論は、社会としてウイルスやワクチンをどう受け入れるかという問題にもつながっている」

 うちだ・さとし  1981年、宇治市出身。東京大医学部卒。北見赤十字病院、東京大大学院特任助教を経て2020年から現職。mRNAを医薬品やワクチンに応用する研究に従事し、新型コロナウイルスのワクチン開発にも取り組む。

■厚労省は対象を12歳以上に拡大

 厚生労働省は6月1日付で、16歳以上としていたファイザー製ワクチンの対象を12歳以上に拡大した。理由として、海外の治験で16歳以上と同様の安全性と有効性が確認できたこと▽10代の10万人当たりの感染者数は60代や70代より多く、医療提供体制に一定の影響を与えていること―などを上げている。

 海外で承認されたワクチンは、人種の差を確認するため国内でも臨床試験をしていた。今回は対象年齢を引き下げるだけのため、新たな試験は必要はないと判断した。12~15歳の接種には保護者の同意が必要で、開始時期は各自治体の判断となる。

 ただ学校での集団接種の場合、接種への同調圧力が働いたり、希望しない児童が差別を受けたりする恐れがある。日本小児科医会は若年層ほど副反応疑いが多く出ることや、接種の心の負担からくる失神などが起こりやすい年齢であることなどから、「丁寧な対応が可能な個別接種を基本とすべき」と提言した。これらを受け文部科学省は22日、学校での集団接種は現時点で推奨しないと自治体側に通知した。

 米国やカナダでは5月上旬から12~15歳への接種が始まっている。またファイザー、モデルナ社ともに生後6カ月~11歳の治験を進めている。政府は現在18歳以上が対象のモデルナ製の適用を12~17歳に拡大する方向で調整しており、さらに接種年齢が引き下げられる可能性がある。