レストランではテーブルにいながら、注文から支払いまでがスマホで済む(中国・西安市)

レストランではテーブルにいながら、注文から支払いまでがスマホで済む(中国・西安市)

スマホ決済でのみ商品が購入できる自販機が急増している

スマホ決済でのみ商品が購入できる自販機が急増している

 買い物、税金納付、給料の受け取り…。現金を使わない「キャッシュレス」が生活に浸透し始めた。中でもスマートフォンによる電子決済「スマホ決済」は、日本でも若者を中心に利用が急速に広がっている。その一歩先を行くのが、「キャッシュレス大国」の中国だ。大陸の津々浦々まで普及する実情を、歴史都市・西安で探った。

■「現金では買えないよ」

 中国の中央部で人口約3700万人を擁する陝西省。省都西安は上海から約1400キロ、北京から約千キロの内陸地にある。果たしてどれほどスマホ決済が浸透しているのだろうか。

 現金612元(約1万円)だけを握りしめ、西安咸陽国際空港に降り立った。早速、飲料の自動販売機でジュースを買おうと札の投入口を探したが、見当たらない。通りがかった中国人男性に「現金では買えないよ」と身ぶりで告げられた。

 自販機はQRコードをかざすパネルが付いていて、スマホ決済でしか購入できないようだった。中国では現金非対応の自販機が急増しており、早速出鼻をくじかれた。

 レストランの円卓の上にも、二つのモバイル決済のマークが掲げられている。支払いのみならず、注文もスマホで可能といい、店員の対面接客はほとんどなかった。

 市場の露店でも買い物をしてみた。アクセサリーを売る店で10元紙幣を出すと、店主の女性は露骨に嫌な顔を浮かべ、スマホ決済を勧める看板を指さす。偽札が出回る中国では、すでに小さな露店にまでキャッシュレスが浸透していると実感した。

 街頭で出会った大学生の陳天殊さん(20)は「ほぼ100%全てスマホで決済する。現金はここ最近持ち歩く必要がない」といい、「親戚の小学生も祖父母も、スマホを持っている人はみんなそうします」と話した。

■待ち時間短縮、人件費削減

 中国のスマホ決済は、電子商取引大手アリババグループ系の「アリペイ」と、IT大手の騰訊(テンセント)系の「ウィーチャット・ペイメント」が二大勢力だ。いずれもスマホにダウンロードしたアプリから、自身の銀行口座などにひも付いたQRコードを取得する。店側の専用端末にスマホをかざすだけで決済が完了する。

 アリペイの利用者は中国で7億人以上とされる。中国人民銀行によると、2017年のスマホを含む「モバイル決済」額は前年比28・8%増の202兆9300億元(約3300兆円)。中国では個人の信用力を重視するクレジットカードがあまり普及しておらず、支払いと同時に口座から即時引き落とされるスマホ決済が重宝される。

 旅に同行してくれた中国駐大阪観光代表処(大阪市)で特別顧問を務める白雪梅さんは「人口の多い中国では飲食店で待ち時間が短いのはとても喜ばれる。人件費も削減され、厨房の人員を強化できるのでは」とみる。利用に応じてスマホ上で割引クーポンが発行されるなど、利用促進につながるメリットもあるという。

 日本では20年の東京五輪や25年の大阪・関西万博を控え、訪日客による経済効果に期待が高まる。政府はモバイル決済普及率を15年の18・4%から25年までに40%へ引き上げる目標を掲げるが、現金志向の強い日本でどこまでキャッシュレスが定着するかは未知数だ。