民主主義の根幹に関わる公文書改ざん疑惑の全容解明につなげなくてはならない。

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、2018年に自ら命を絶った元財務省近畿財務局職員赤木俊夫さんが改ざんの経緯を書き残した「赤木ファイル」が遺族側に開示された。

 ファイルは、赤木さんが行った作業記録や本省理財局とやりとりしたメールなどで518ページに上る。当時の佐川宣寿理財局長の指示をうかがわせる内容が複数あり、組織的に改ざんを進めた実態を明らかにする資料と言えよう。

 冒頭の備忘記録には「決裁済みの調書を修正することは問題があり行うべきではないと、本省に強く抗議した」などと記されており、不正を強いられた赤木さんの怒りと無念さがにじんでいる。

 ファイルは、赤木さんの妻が国や佐川氏に損害賠償を求めた訴訟で提出を要請してきた。国側は当初、存在さえ明らかにせず、裁判所に促されてやむなく応じた。

 財務省の隠蔽(いんぺい)体質は、今なお根強いままだと言わざるを得ない。

 ファイルでは改ざんを指示した人物に関して黒塗りが多く、十分な情報開示とは認められない。現場職員を自死に追い込んだ深刻な問題に、真摯(しんし)に向き合うべきだ。

 財務省が18年6月に公表した調査報告書は、安倍晋三前首相の昭恵夫人や他の政治家の名前の削除を認めたが、佐川氏の関与については「改ざんの方向性を決定づけた」とあいまいな結論だった。

 麻生太郎財務相は再調査を否定している。財務省幹部は、ファイルについて「調査報告書と基本的に変わらない」などとしているが、ならばなぜ今まで公にしなかったのか疑問だ。

 今回開示されたファイル記録を踏まえ、佐川氏の具体的な働きかけや政治家の関与がなかったか、徹底的に解明する必要がある。

 文書改ざんを巡っては、大阪地検特捜部が、検察審査会の「不起訴不当」議決による再捜査でも不起訴とし捜査を終結している。誰一人法的責任を問われておらず、疑惑解明を願う国民の期待に応えられていない。

 赤木さんの妻は、第三者委員会による再調査の必要性を訴えている。野党も、国会の閉会中審査でファイル内容の詳細な説明を求めている。

 佐川氏らの省内処分だけで疑惑をうやむやにすることは許されない。政府はこれらの要求に応じ、政治の責任を果たすべきだ。