新作となるキリンのイブキ。コロナ禍で動物園が臨時休園していたため、園外から観察して仕上げた

新作となるキリンのイブキ。コロナ禍で動物園が臨時休園していたため、園外から観察して仕上げた

エミューの豪

エミューの豪

7カ月掛けて完成させたライオンのナイル。個展では展示していない

7カ月掛けて完成させたライオンのナイル。個展では展示していない

動物園に通い続ける琴塚さん。個展では鉛筆画のほか、膨大な量のスケッチなども置き、「虫眼鏡もあるので細かいところまで見てほしい」と呼び掛けている(京都市左京区山端壱町田町・春巻スタンド ラップ&ロール)

動物園に通い続ける琴塚さん。個展では鉛筆画のほか、膨大な量のスケッチなども置き、「虫眼鏡もあるので細かいところまで見てほしい」と呼び掛けている(京都市左京区山端壱町田町・春巻スタンド ラップ&ロール)

 京都市動物園(左京区)にこの4年間、毎日のように通い詰め、動物の絵を描いている男性がいる。開園から閉園まで動物と向き合い続け、毛並みの一本一本まで精緻な鉛筆画を生み出してきた。これまでの作品や膨大な量のスケッチを集めた個展が、左京区の飲食店で開かれた。

 男性は、左京区在住の琴塚吉太朗(きちたろう)さん(39)。10代の頃から芝居や身体パフォーマンスなどに打ち込み、20代後半から独学で絵を描き始めた。やがて「いろんなことをしてきたが絵は1人でできる。見たものをしっかり描けるようになろう」と絵画に一本化。「モデル代を払うお金はないし、静物画だと家にこもってしまう。動物園なら年間パスを買えば安い」と考え、2017年5月から通い始めた。

 当初は動き回る動物相手に苦労し、画材や技法など試行錯誤を続けた。約4カ月後、鉛筆で丹念に描く今のスタイルが確立したという。

 何を描くかは直感などで決めるが、すぐに制作には取りかからない。まず1カ月ほど、徹底的にスケッチを重ねる。多い時は1日20枚に上り、動物の行動や性格、骨格の仕組みなど気付いたことも詳細に記録する。

 「観察を続ければ愛着が湧くし、いろんなことが見えてくる」。オシドリの個体の見分け方を飼育員に伝え、感心されたほどだ。そして、「頭にどんどん蓄積されたものを基に、その個体の一番の魅力や『らしさ』を作品にする」。

 鉛筆は濃淡20本を使い分けている。ゾウのごわごわした皮膚の質感、オシドリの微細な構造の飾り羽、キリンの多彩な模様や密集した毛並み…。「忠実に再現するため、必然的に細かい鉛筆画になった」と笑みを浮かべる。

 週1回の休園日や用事などを除き、通うのは年間250~300日。弁当持参で、季節や天候も問わない。自宅との往復の時間が惜しくて、昨年には園の近くに引っ越した。

 動物とのエピソードも多彩だ。エミューのジニーは、琴塚さんが気になるのか、いつも真正面にやって来た。「本当は横顔を描きたかったけれど…」と当人は苦笑い。ゴリラのゲンタロウに完成した絵を見せた時は、拍手するように手をたたいてくれたので驚いた。

 昨年1月、国内最高齢で死んだライオンのナイルの絵は、完成まで7カ月要した。「何とか立とうとする姿と、死に向かうはかなさのコントラストを全精力懸けて描いた」と振り返る。