仕事による強いストレスで精神障害を発病したり、過重労働で脳や心臓を患ったりする人が後を絶たない。

 厚生労働省がこのほど発表した2020年度「過労死等の労災補償状況」は、「精神障害」と「脳・心臓疾患」の両分野の認定を通し、労働者が置かれた厳しい状況を映しだしている。

 このうち、うつ病など精神障害に関する事案で労災認定されたのは608件(前年度比99件増)と、2年連続で最多を更新した。

 原因別では、今回から認定基準項目に追加された「パワーハラスメント」が99件(うち自殺は10件)で最も多かった。従来の「嫌がらせ、いじめまたは暴行を受けた」から項目を分けたことで、深刻さが浮き彫りになった。

 パワハラ防止策を企業に義務付ける女性活躍・ハラスメント規制法が昨年6月に施行され、大企業は対策が責務となった。努力義務の中小企業にも来年4月から適用される。

 「指導との線引きが難しい」との声がいまだに聞かれるが、パワハラが多くの働く人の健康や命を脅かしている実態を重く受け止める必要がある。

 厚労省の委託で昨年秋に労働者8千人を対象に行われた民間のインターネット調査では、パワハラがある職場の特徴として「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」「残業が多い/休暇が取りづらい」が上位に挙がった。

 風通しの良い職場環境づくりをはじめ、一人が担う業務量の見直しや効率化が従業員の心身の健康維持に関係することを示していよう。

 労災補償のもう一つの分野である「脳・心臓疾患」の認定件数も高止まりしている。

 20年度の労災認定は前年度比22件減の194件だった。働き方改革や新型コロナウイルス感染拡大で労働時間が減ったのが要因とみられる。ただ、前年度までは200件台で推移しており、働く人にとって過酷な状況は変わっていない。

 こうした現状を受け、厚労省は脳・心臓疾患の労災認定基準を20年ぶりに見直す方針だ。

 同省の専門家検討会が示した報告書に、残業時間が過労死ラインに届かない場合でも、不規則勤務などの有無を判断材料として重視する内容が盛り込まれたのは一歩前進といえる。

 業務のIT化など働き方が多様化しているのに加え、コロナ禍で労働を取り巻く状況は激変している。

 政府の20年版「過労死等防止対策白書」によると、感染が拡大した昨年3~4月に、大幅な長時間労働をした人の割合は全産業平均で減る中で、運輸や医療では増加した。特定の業種に集中している実態が浮かび上がっている。

 従業員の働く環境改善について、企業は幅広い観点からの対応が問われている。

 長年の労働慣習や仕事のやり方を見直しながら、労働者が過度な負担なく働ける職場づくりを進めなければならない。