企業活動を想定した研修プログラムに取り組む社員と学生たち(京都市右京区・小川珈琲本社)

企業活動を想定した研修プログラムに取り組む社員と学生たち(京都市右京区・小川珈琲本社)

 スーツ姿の京都産業大(京都市北区)の学生が、パワーポイントを示しつつ呼び掛けた。「商品を売り込むための戦略を立案しましょう」。右京区にあるコーヒー製造業「小川珈琲」本社。2~4年の学生9人が同社員と3カ月かけ練り上げた研修プログラムが披露された。タイトルは「珈琲職人への挑戦」。受講生は入社1年目の社員7人だ。

 同大学の久保秀雄准教授のゼミと同社は今年、初めて社員向けの研修プログラム作成に乗り出した。大学側には、学生の学習への動機付けや社会人として必要なスキルの習得といったメリットがある。企業側は、大学のアイデアや知見を生かすことができる。

 プログラムはドラマ仕立てにした。営業担当が喫茶店で、競争の激化に悩むマスターの嘆きを耳にする場面から始まる。味が変わったというクレームや値下げ要望への対応を巡り、1時間半かけロールプレイ形式で考えた。見守った久保准教授は終了後、「企業側のニーズをすくい取って、実用的な内容になったはず」とほっとした表情で話した。

 久保准教授は法社会学が専門で、企業向け研修プログラムをつくるのは初めて。同社の広報誌を約30冊読み込んで企業理念を理解した。参加した法学部4年の高橋良昌さん(21)は「大学は社会に出るためのスキルを学ぶ場所。社会人として働くイメージができた」と手応えを語った。

 大学と企業が授業で連携する試みは各地で進められている。文部科学省によると、京産大のように企業の提示した課題解決に取り組む授業のある大学は、2015年度の調査で331校に上った。

 学生たちが将来働く社会では男女格差など課題もあることから、女性の働き方に焦点を絞った授業などを用意して対処法を伝える大学もある。

 京都光華女子大(右京区)のキャリア形成学部は1年生向けに、卒後3~30年の7人を招いて講義してもらっている。講義全体を担当する加藤千恵教授は「女子学生にとって、卒業から数十年にわたって働くというイメージは抱きにくい。実体験を語ってくれる『お手本』が必要」と説明する。

 7月にはオフィス機器メーカーに勤めるOG松浦莉穂さん(26)が約100人を前に、働く経験を講演した。「将来産休を取得しやすいよう、会社から必要とされる人材になる努力をしています」「礼状を欠かさないなど、気配りが大切」と心掛けを伝えた。受講した学生からは「男性と比べて女性にハンディがあると思った。でも働くイメージもできた」などの声が聞かれた。

 京産大の久保准教授は「企業と協力して課題に取り組んでも、実際に働いて学ぶ内容には及ばないでしょう」と一定の限界を認める。しかし企業と協力して行う授業の意義に疑いはないという。「学生は、授業で学んだ問題解決の手法が実際に企業で生かせるのか確かめることができる。学生が学外に出て知見を深めるのは学問の本道です」

 <学びアップデート 過熱する「人材」教育4>  社会の激しい変化の波は、大学をはじめ、高校や中学、小学校までも巻き込み、学びの形を変えようとしている。大きなうねりの中で、新たな教育を模索する現場を点描する。