京町家を活用したゲストハウスが目立つ六原学区。コロナ禍で休業する施設が増えている(6月18日、京都市東山区)

京町家を活用したゲストハウスが目立つ六原学区。コロナ禍で休業する施設が増えている(6月18日、京都市東山区)

 大阪国税局が1日発表した路線価で、京都市内の地価下落の基調が鮮明となった。新型コロナウイルス禍で観光需要が落ち込んだ地域を中心に宿泊施設用の土地需要や開発が激減したためだ。観光地ではコロナ前に急増した京町家風ゲストハウスの売却や賃貸物件への転用が相次いでいる。

 最高路線価の対前年下落幅が8・7%と京都府内最大だった京都市東山区。世界遺産・清水寺が近い六原学区では2010年代半ばからインバウンド(訪日観光客)の急増で路地の町家が次々と宿泊施設に姿を変えた。だが20年のコロナ禍で状況は様変わりし、キャリーケースを引く観光客の姿は見られなくなった。簡易宿所は休業に追い込まれ、郵便物が差し込まれたままの建物が目に付く。

 「地価の高騰時はすぐに売れた物件が、半年くらい売れ残っている」。六原まちづくり委員会委員長の菅谷幸弘さん(69)は話す。人通りの激減で一帯は静かになったが、「空き家」状態のゲストハウスが増加し、住民には防犯上の懸念が強まっているという。

 京町家の売買を多く手掛ける不動産会社の八清(下京区)によると、ゲストハウスの売却依頼はあるが「数年前のピーク時の水準では取引されていない」という。足元で目立つ相談は、賃貸住宅への転換だ。賃貸物件は景気変動の影響を受けにくく、事業者が安定的な収益を求めているためだが、「利回りはゲストハウスと比べて半減する」(西村孝平社長)と言う。

 地域事情に詳しい府不動産コンサルティング協会の小林悟理事(48)は「宿泊施設の供給は、富裕層向けの高級ブランドを除けばすでに過剰だ。コロナ禍が収束しても、数年前のように地価が急騰する状況にはならないだろう」と話す。

 ただ、インバウンド需要の回復への期待は高く、物件を手放す所有者は限定的で、「取引が停滞しているのが実態」(小林理事)という。一方、多くの宿泊事業者は資金繰りが厳しく、物件を売却するか、維持するか、「我慢比べ」の様相を呈している。