「完全キャッシュレス」を掲げる「PIZZA百万遍」。店先には、幅広いキャッシュレス決済への対応マークが貼られている(京都市左京区田中門前町)

「完全キャッシュレス」を掲げる「PIZZA百万遍」。店先には、幅広いキャッシュレス決済への対応マークが貼られている(京都市左京区田中門前町)

スマホでQRコードを読み取り、簡単に決済ができる(PIZZA百万遍)

スマホでQRコードを読み取り、簡単に決済ができる(PIZZA百万遍)

店頭には「当店は現金のお取り扱いはございません」の表示がある(PIZZA百万遍)

店頭には「当店は現金のお取り扱いはございません」の表示がある(PIZZA百万遍)

キャッシュレス決済用のタブレット。現金で払いたいという客が多かったため、現在は現金払いも受け付ける(京都市中京区中魚屋町・つけそばむらじ錦市場店)

キャッシュレス決済用のタブレット。現金で払いたいという客が多かったため、現在は現金払いも受け付ける(京都市中京区中魚屋町・つけそばむらじ錦市場店)

 電子マネーやクレジットカードで代金を支払うキャッシュレス決済が広がりつつある中、現金お断りの「完全キャッシュレス」の店舗が京都市内に現れ始めた。コロナ禍に伴う「非接触」の後押しや店員の働き方改革といった狙いがある一方、日本人の“現金信仰”は根強く、対応に苦労もあるようだ。

■「現金のお取り扱いはございません」慌てる人も

 京都大吉田キャンパス(左京区)前に、6月オープンした「PIZZA(ピッツァ)百万遍」。まき窯で焼き上げるナポリピザのテークアウト専門店だ。店頭にはピザの写真とともに、「現金のお取り扱いはございません」の表示。「完全キャッシュレス」を掲げ、決済はクレジットカードのほか、JR西日本のICカード乗車券「ICOCA(イコカ)」、スマートフォン決済サービス「PayPay(ペイペイ)」など約30種以上で対応する。

 京大大学院に通う長男(22)と来店した母親(49)は「初めて来たけど、時代の流れで面白い」。ペイペイのQRコードを読み取り、ピザ2枚の代金を支払った。

 他の客も慣れた様子だが、現金を使えないことを知って慌てる人も。ある親子はクレジットカードを取り出して事なきを得たが、「驚いた。現金も併用できた方がありがたいけど…」と苦笑した。

■コロナで非接触の流れ「加速する」

 同店は、東約1キロにある本店「ピッツェリア ダ チーロ」の姉妹店。運営する中野剣司社長(29)は、新店を完全キャッシュレスにした理由について、「コロナ禍で非接触の流れが進み、本店では現金の割合がぐっと下がった。今後さらに加速するキャッシュレスの波に乗るため」と語る。ピザ職人の修行時代に過ごしたイタリアやオーストラリアでは、キャッシュレスが当たり前だったことも背中を押した。

 店員が現金を扱わないことで、レジ作業などの負担は軽減され、労働時間は短縮。本店にいても売り上げを瞬時に把握でき、食材の仕入れや仕込みにも臨機応変に対応できる、という。

 一方、未成年や高齢者を中心に購入を断念する客もおり、「想像していたけど、その姿を目の当たりにするとグサッとくる」。例外的に現金を受け取るケースもあるが、「次回はキャッシュレスにしてもらえるよう声掛けを工夫し、オンラインのポイントサービスでお得感も伝えている。(業者に支払う)手数料は安くないが、売り上げは好調で、同様の店をさらに増やしたい」と意欲を見せる。

■錦市場にも登場、でも現金払いを受け入れざるを得ず…

 「予想より現金の客が多く、お断りするのは失礼に当たると思った」。そう漏らすのは、京の台所・錦市場(中京区)に昨年末オープンした「つけそば むらじ 錦市場店」の店主、連恭子さんだ。

 コロナ禍を背景に完全キャッシュレスでスタートを切ったが、高齢者が多い土地柄や、4種類のQRコードのみという決済手段の少なさが響き、約1カ月後に現金払いも受け入れた。小さな金庫とレジ用のタブレットを急きょ用意、現在は大半の人が現金払いを選んでいるという。

 だが、キャッシュレス化の推進は諦めていない。「(キャッシュレス化が進む)海外の観光客もいずれ戻ってくる。衛生面や安全面から、現金の取り扱いをできるだけ省き、より接客や調理に力を入れたい」と意気込み、決済手段も充実させる考えだ。

■宿泊や飲食で導入増えるも、海外ほどは進まず

 市観光協会が2019年に会員対象に行った調査によると、キャッシュレス決済を導入している店舗は83・8%と急速に拡大。宿泊施設(93・1%)や、飲食店(90・8%)の導入率が特に高い。

 ただ、現金への高い信頼度などから、キャッシュレス化は海外に比べると進んでおらず、「完全キャッシュレスの店となると、かなり珍しいのではないか」(同協会)。

 物々交換から貨幣や紙幣、カード、電子化へと進化を続ける「おかね」。いずれ、完全キャッシュレスの波もやって来るのだろうか。

キャッシュレス決済 クレジットカードのほか、銀行口座から即時に引き落とされるデビットカード、カード型電子マネー、QRコードやタッチ式のスマホ決済など多様な種類がある。経済産業省によると、2019年の国内のキャッシュレス決済比率は前年比2・7ポイント増の26・8%。主要国は40~60%台が多く、韓国では90%超。日本政府は25年までに40%程度、将来は80%を目指している。