野洲市が計画する新病院のイメージ図(同市提供)

野洲市が計画する新病院のイメージ図(同市提供)

野洲市民病院の収支計画の変遷

野洲市民病院の収支計画の変遷

市民病院計画を巡る動き

市民病院計画を巡る動き

 2021年開院予定の滋賀県野洲市民病院の事業収支計画が二転三転している。建設費は増加の一途をたどり、黒字になる時期も繰り返し変更されている。市は「大きな目で見て事業の見通しを考えるためのもの。影響はない」とするが、新たに市の一般会計から7億円を支出する計画も示され、市民からは「将来に不安を感じる」との声も上がる。

 新病院の建設に関して初めて収支計画が示されたのは12年5月。市による整備の可能性を探って専門家らの委員会が検討し、開院20年後も赤字が続くという結論だった。以後、病院事業が黒字化するまでの年数は計8回変更された。

 特に市議会での対立が深まった15年は頻繁に修正された。1月には、それまで「5年目で黒字」としていた見通しを、建設費の高騰などで20年後も赤字が続くと発表。しかし3月と10月には一転して「16年目で黒字」「8年目で2400万円の黒字」に変わった。理由としては、14年度の野洲病院の業績の反映▽見込み患者数の増加-などと説明されたが、市議会は病院関連予算を重ねて否決した。

 直近では昨年12月の収支計画で、黒字になる時期を従来の「2年目」から「12年目」に遅れると修正。今年2月に市が示した改善策では、貸付金の予定だった当初資金7億円を返済義務のない「出資金」に変更する▽医療機器の本格的な更新を6年目以降にずらす-などを行うことで「4年目で8万2千円の黒字」となり、7年目以降は黒字が続くとの見通しを示した。

 収支計画の変遷について山仲善彰市長は開会中の市議会などで「情報を全て公開しているため見通しが変動するのは当然。大きな目で見て病院事業が成立可能かどうかを判断するためのもので、数年で(黒字)転換するのであれば問題ない」と説明する。

 一方で、新病院の整備費は膨らみ続けている。11年8月の検討委員会では(民営の)野洲病院の提案通りに実施した場合、整備費は約55億円と試算した。その後建設費は徐々に増加し、15年3月には病床数を減らすなどして費用削減を試みたが、現在は当初と同じ建設面積と約200の病床数で約100億円を見込む。駐車場など周辺整備を含めると約110億円に上る。

 整備費について山仲市長は「用地取得費や駐車場整備費を含まずに整備費を安く見せることもできるが、含むことで国の交付金が得られるなどの利点がある」と説明。また「野洲病院は本来11年に経営不振で閉院していたが、新病院計画があることで保ってきた。市民に適切な医療環境を提供することが何よりも大切」と話し、病院事業に取り組む意義を強調する。

 収支計画の変遷について市民の受け止めは複雑だ。無職男性(69)は「病院があれば便利だが、大きな赤字を抱えるのなら考え直さないといけない。収支計画がころころ変わることには怖さを感じる」と話す。病院整備の中止を求めて提訴した市民団体の山川晋代表(67)は「これだけ頻繁に変動する収支計画は信用できない。(改善策は)お金を一般財源から投入しているだけ。経営改善とは言えない」と指摘する。

 ■健全な改善策と言えず

 滋慶医療科学大学院大学(大阪市)の宇田淳教授(病院管理学)の話

 収支計画は患者数や職員給与などをどう見るかによってその都度変動するものだが、赤字になるから市が一般会計から7億円を出資するというのは、健全な収支改善計画とは言えない。

 整備費については、建設業の人手不足で上昇傾向にあり、今後も上昇するだろう。2017年11月の実施計画を見ると、病床稼働率は21年度で73・8%、25年度で81・9%。2割の空きがある計算だが、病床数を減らすことで建設費が削減できる可能性がある。

 市は病院事業を進めるなら、市民にとってのメリットやコスト負担を丁寧に説明する必要がある。特に今後は、一つの病院だけでなく地域の病院間で役割分担する「地域包括ケア」が重要になる。湖南地域で新病院がどんな役割を果たすのかも周知していくべきだ。