明石市の泉市長(右)から支援金の支給決定を伝えられ、手話で感謝する小林宝二さん、喜美子さん夫妻=4日、神戸市中央区・市総合福祉センター

明石市の泉市長(右)から支援金の支給決定を伝えられ、手話で感謝する小林宝二さん、喜美子さん夫妻=4日、神戸市中央区・市総合福祉センター

 旧優生保護法(1948~96年)下で障害者らに不妊手術が強いられた問題で、兵庫県明石市が独自の救済に乗り出した。国の一時金支給法の対象から外れている配偶者や、中絶させられた人も旧法の被害者と捉え、支援金を支給する。京都府や滋賀県も含めて一時金の申請・認定件数が低調な中、支援者は「他の自治体にも広がってほしい」と期待している。

 明石市の泉房穂市長は弟に障害があり、自身は社会福祉士の資格を持つ。市長になる前は弁護士として活動していたこともあり、不妊手術当事者のみを救済対象とする一時金支給法には不備があると問題視。当事者と配偶者の双方を被害者と位置付ける被害者支援条例を検討すると6月に表明した。

 明石市在住で聴覚障害のある小林宝二さん(89)、喜美子さん(88)夫妻は、医師から何も告げられないまま中絶と不妊手術を受けさせられたとして、神戸地裁に国家賠償請求訴訟を起こしている。

 明石市は新たな条例の制定まで時間がかかることから、小林さん夫妻を早期に救済するため、既存の犯罪被害者等支援条例の活用を検討。同条例は犯罪被害者らの遺族に支援金を支給できることから、「夫妻は旧法の被害者で、中絶手術で亡くなった胎児の遺族に当たる」と解釈し、40万円を支給することにした。原告側弁護団によると、一時金支給法以外の法令に基づく救済は全国で初めて。

 4日に神戸市内で開かれた支援団体や弁護団の決起集会で、泉市長は小林さん夫妻に支給決定書を手渡し、手話を交えて「気持ちばかりの金額ですが市民は2人の味方です」と述べた。宝二さんは「私たちのために尽力いただき感謝している。今まで苦しかった。ありがたい」と笑顔を見せ、喜美子さんは勝訴判決に向け「がんばります」と手話で応じた。

 厚生労働省によると一時金の認定件数は5月末時点で908人(京都府11人、滋賀県12人)。統計上、約2万5千人が優生条項に基づく不妊手術を強いられたことが判明しており、救済は3・6%にとどまる。

 藤原精吾弁護団長は、明石市の取り組みについて「一時金支給法の不十分さを自治体が指摘したという点で象徴的な意味がある。不妊手術を実施した都道府県も支援の声を上げてほしい」と話す。