「よしや楽器」店内でギターの修理を手掛ける故田中修さん。寡黙な職人肌だったが、常連には親身に相談にも乗り、ギター愛好家に慕われた(写真は親族提供)

「よしや楽器」店内でギターの修理を手掛ける故田中修さん。寡黙な職人肌だったが、常連には親身に相談にも乗り、ギター愛好家に慕われた(写真は親族提供)

 中古ギター専門店で、映画「パッチギ!」のロケも行われた「よしや楽器」(京都市上京区河原町通荒神口下ル)の主人田中修さんが昨年12月、がんのため亡くなった。71歳だった。病と闘いながら最期まで店に立つことを望むほどギターを愛し、修理や調整の腕前は数多くのミュージシャンやギター愛好家に信頼されていた。突然の別れを惜しむ声が相次いでいる。

 1968年の京都を舞台にした青春映画「パッチギ!」(2005年公開、井筒和幸監督)で「よしや楽器」は重要な場所として登場する。高校2年の主人公(塩谷瞬)が酒屋の若旦那(オダギリジョー)と出会い、フォークギターを弾き始めるきっかけになる。親族によると当初、田中さんはロケの要請を断ったが、映画スタッフに頼み込まれて応じたという。

 「芸能人に全く関心がない人だったが、撮影の合間にオダギリさんとギター談義を交わしたようで『なかなかいい青年じゃないか』と感想を漏らしていた」と長女の太田ありささん(47)は笑う。

 田中さんはもともとフラメンコギタリストで、ギター教室で教えていた。店は、近くで兄が営む質屋の質流れ品を1960年代に売り始め、70年代後半から好きなギターに特化して営業を始めたという。「ギターを触っていれば幸せという夫だった」と妻の嘉世さん(71)は振り返る。

 「修さんにとってギターは商品ではなく作品。引き取った楽器は良い音が出るまでとことん細部を整えた」。店を手伝うこともあったギタリストのtake―bowさん(42)は話す。

 2年前に肺腺がんであることが分かり、入退院を繰り返して治療を続けた。店は断続的に開いた。「外泊が認められると家に帰る前にまず店に寄るほど店が命だった」と嘉世さんは話す。臨時休業しながら再開を目指したが、昨年12月3日早朝に亡くなった。

 数日後に京都市内の教会で開いた「しのぶ会」には常連客ら約120人が参加した。死去を知らせる店のフェイスブックページには残念がる声が相次いで寄せられ、東京から感謝の手紙が届いた。店には修さんが修理を手掛け、そのまま売ることができる状態のギターが数多く残っており、嘉世さんは4月からの営業再開を目指している。「40年の思いが詰まった店を何とか続ける道を探りたい」と話す。