今秋から始まる「幼保無償化」は、待機児童問題を置き去りにしてスタートするのだろうか。

 4月入所の認可保育所第1次選考で、申し込んだ0~2歳児の7人に1人が入れなかったことが、共同通信が政令市や東京23区などに対して行った調査で分かった。

 特に、政令市など都市部で厳しい状態が続いている。

 無償化には、子どもが認可施設に入れない保護者には恩恵が届かない、待機児童解消が先決だ、など多くの批判がある。そうした問題はいまだ解決されていない。

 幼保無償化を看板政策に掲げる以上、安倍晋三政権は早急に対策を講じなくてはならない。

 調査によると、横浜市や川崎市では、保育所の受け入れ枠が3千人分以上も不足していた。申込数に対する「落選者」は計約2万4千人にも上る。入所が決まらなかった保護者は認可外やベビーシッターなどに頼らざるを得ない。

 保育所全体の受け入れ枠は増えているのに落選者がなくならないのは、交通の便が良いなど一部施設に人気が集中することもある。

 保護者からみれば、通わせるのに時間がかかって仕事に支障が出たり、きょうだいが別々の場所に行くことになったりしては、何のための保育所か分からなくなる。

 政府は、国の基準を満たさない認可外施設でも5年間は一定額を補助する仕組みを設ける。認可施設に入れなかった子どもの保護者を救済するためだ。

 ただ、認可外は認可施設に比べて死亡事故が多いなど安全面の課題も指摘されている。政府は「質の確保、向上を図る」というが、具体的な対策は示していない。

 一昨年の衆院選で突然打ち出した公約だけに議論が足りず、矛盾を詰め切れていない感がある。

 とりわけ、最大の利害関係者ともいえる保護者の声を聞いたようすがうかがえないのは、誰のための無償化なのか疑問を抱かせる。

 自治体には、無償化による待機児童のさらなる増加や、認定事務の遅れなどを懸念する声もある。

 中でも、深刻なのが保育士不足だ。保育の受け皿を増やすには、まず保育士の処遇を改善すべきとの声は保護者からも出ている。思い切った支援が必要ではないか。

 安倍政権は2020年度末までに待機児童をゼロにする目標を掲げるが、施設整備といった数合わせだけで済ませてはならない。

 保護者が安心して子どもを預けられる環境を整えることこそ、政治の責任である。