カナダ国旗には国の象徴であるサトウカエデの葉があしらわれている。その樹液はほのかに甘く、煮詰めるとメープルシロップになる。かつて入植者らは先住民にならって樹液を栄養源として利用し、食糧が乏しい冬をしのいだ▼そのメープルシロップ作りが、カナダから遠く離れた琵琶湖の北側で進んでいる。長浜市内で森林保全や林業就労支援に取り組む「ながはま森林マッチングセンター」の森林環境保全員橋本勘さん(43)が呼びかけて仲間を集めた▼山々に自生するイタヤカエデなどの幹に穴を開けて無色透明の樹液を採取する。およそ40分の1に煮詰めたシロップは本家のカナダ産よりさわやかな甘さだといい、地元観光施設などで人気を集める▼カエデの花言葉のひとつに「蓄え」がある。樹液が甘いのは幹のでんぷんを糖に変えて厳しい寒さから身を守るためだという。カエデが蓄えた自然の恵みが橋本さんらの試みを後押しする▼シロップができる湖北の森に蓄積した水はやがて琵琶湖に注いで京など下流の人々を潤す。他方、森は戦後、村人の手が入りにくくなり獣害に頭を悩ませる▼「水をとってみても、森を守ることは私たち自身を守ることにつながるんです」。シロップ作りが森への関心を喚起するきっかけになればと橋本さんは願う。