大津地方裁判所

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 福井県の東尋坊で2019年、滋賀県東近江市の嶋田友輝さん=当時(20)=を殺害したとして、殺人などの罪に問われた当時17~19歳の少年6人と男(41)計7人全員に、大津地裁は今月までに最長懲役19年の実刑判決を言い渡した。知り合って間もない少年らがその場の空気に流され、凄惨(せいさん)な暴行を重ねた事件。来春には18、19歳の厳罰化を図る改正少年法が施行されるが、罪を犯した少年らの更生に向けた矯正教育の重要性が高まっている。

 判決によると、犯行を主導したとび職の元少年は、19歳6カ月だった19年9月中旬、嶋田さんと知り合った。嶋田さんが暴力団関係者とトラブルを起こしたとして一方的に不満を募らせ、同10月8日に暴行を開始。少年らは知人を介するなどして次々に集まり、たばこを顔につける▽のど仏の骨が折れるまで首を絞める▽歯を抜くなどの暴力や人格を否定する行為をエスカレートさせた。殺害方法も嶋田さんの目の前で話し合い、同18日夜、東尋坊の崖から飛び降りるよう迫った。

 元少年以外は嶋田さんへの直接的な恨みはない一方、誰も暴行を止めようとはしなかった。新潟青陵大の碓井真史教授(社会心理学)は「濃密な人間関係がないからこそ、ノリでその場が盛り上がる道具として暴力が用いられた。最近の少年グループは、ボスが仲間の行動を止めるリスクを取らず、誰も流れに逆らえなかったのでは」と、少年特有の衝動性の高さも影響した可能性を指摘する。

 今回、犯行に及んだ少年の一人は、過去に数回少年院に収容され更生プログラムを受けたにも関わらず、仮退院後間もなく犯行に及んでおり、判決では「過ちの重大性や本質、自己の問題性に十分向き合えていない」と指摘された。遺族らの厳しい処罰感情を背景に、来春、罪を犯した18、19歳を「特定少年」と位置づけ、家裁から検察官に送致(逆送)し、20歳以上と同じ刑事手続きを取る対象事件を拡大するなどの厳罰化を図る改正少年法が施行されるが、再犯阻止に必要な教育の在り方も問われる。

 法改正を受け、少年院での矯正教育の在り方を考える法務省の有識者検討会は、民法上大人となる特定少年に「法的・社会的立場が変わることを踏まえた責任の自覚」などを促す教育プログラムの導入を提案。現在、同省などが具体的な内容を検討しているという。

 また、現在の懲役刑は、刑務所内で義務づけられる作業に多くの時間が割かれ、再犯防止指導に十分な時間を確保できていないとの課題も指摘される。法制審議会は昨年10月、懲役刑と禁錮刑を一本化した「新自由刑(仮称)」を創設するよう求める刑法改正の要綱を答申。作業時間を減らし、受刑者の犯罪内容に応じた専門の改善プログラムの時間を増やし、特性に合わせた処遇が可能となるとするが、本格的な議論はこれからだ。

 法務省の有識者検討会のメンバーだった駒澤大の伊藤茂樹教授(教育社会学)は「厳罰化一辺倒では不十分だ」とした上で、「社会復帰後を見据え、社会情勢に合わせて必要な知識やスキルを身に付けさせることが重要。『少年でも大人でもある』微妙な立ち位置の特定少年には、法教育や労働者としての権利などを教え、これまで以上に矯正教育を行うべきだ」と強調する。そして「少年の矯正教育の現状はほとんど知られていない。開かれた形で議論を進め、具体的に矯正教育の何がどう変わるかを、国民に公表し丁寧に説明してほしい」と求めた。

 東尋坊殺人事件  2019年10月19日、福井県の東尋坊の崖下約20メートルの海で、東近江市の嶋田友輝さん=当時(20)=の遺体が見つかった。嶋田さんと知り合って間もない当時17~19歳の少年6人や、無職上田徳人被告(41)が共謀し、同10月17~18日、嶋田さんの脚を車でひくなどの暴行を加え、車のトランクに閉じ込めて東尋坊に向かい、同18日夜、崖から飛び降りさせ死亡させたとして起訴された。殺人罪などに問われた7人の裁判員裁判は20年6月から順次始まり、大津地裁は今年7月14日、犯行を主導したとして、とび職の元少年(21)に懲役19年を言い渡した。共犯の少年ら5人も懲役10年以上15年以下などの不定期刑の実刑判決(確定)。懲役10年の実刑判決を受けた上田被告は控訴している。