遺骨(左)は今も遺影が飾られた仏壇のそばに安置されている。両親は「2年たっても何も進まない」と話す

「ただ待つばかりで何も進まへん」。京アニのベテラン社員だった石田奈央美さん=当時(49)=の両親は、発生から2年がたっても刑事裁判が始まる見通しが立たない現状に、やり場のない思いを抱えている。「納得できなくても、被告の言葉が聞きたい。生きている間に、判決を見届けられるんやろか」。80歳を過ぎた2人は焦燥感を募らせる。

 京アニに対して複雑な思いを抱く。なぜ、簡単に犯人に侵入されたのか。なぜ36人もの犠牲者が出たのか。詳細な説明は聞こえてこない。慰霊碑の建立についても、望む遺族は多いが計画は進まないという。父親(85)は、「娘も他の犠牲者も、京アニを支えてきた。功績をたたえ、事件の風化を防ぐ意味でも建ててほしい」と願う。

 3回忌を前に少しでも気持ちに区切りを付けようと、5月の月命日に納骨をしようと決めたが、寺の手違いで納骨できなかった。「もう少しそばにいさせて、とあの子が思っているんかな」。母親(80)は自らを納得させるようにつぶやく。

 「雨が降りそうやから傘持っていきや」。あの日の朝、娘にそう声をかけると「ふーん」と返事をして出て行った。何の変哲もない一日のはずだったのに、それが最後の会話となった。

 夫婦2人になり、普段は奈央美さんのことも、事件のことも会話には出ないという。母親は「何しても戻ってこうへん。しんどくなるから、考えんようにしている」と涙ぐむ。幼い頃からの記憶がよみがえるのが怖いので、娘の部屋は片付けられない。父親は遺影も見られないという。

 18日に第1スタジオ跡で開かれる追悼式には参加するつもりだ。娘が亡くなった場所で手を合わせられる唯一の機会だからだ。事件後、娘が京アニの色彩表現を支え、世界的に愛される作品の中核を担っていたと初めて知った。「誇りに思っている」。一度も伝えられなかった思いを、何度でも伝えたい。