事件発生から2年を迎え、記者会見する京都アニメーションの八田社長(18日午後、京都市下京区)

 「2年が過ぎても『皆がいてくれたら』という思いは変わらない。それでも、作品を制作して1ミリずつ、前向きに進んでいる」。京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)放火殺人事件の発生から2年。京アニの八田英明社長は18日の記者会見で、癒えることのない苦しみと向き合いながらも、優れた作品を世界中に送り出してきた京アニの再建へ決意を示した。

 八田社長の会見は昨年7月18日以来となる。京アニにとって、事件が起きてからの2年は犠牲者たちが積み上げてきた技術やアニメ制作への熱い思いを受け継ぎ、ファンが待ち望む新作を生み出そうと挑戦を続ける月日でもあった。

 とりわけ大きな節目となったのが、放火殺人事件や新型コロナウイルスの影響から2度の延期を経て、昨年9月に公開された「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」だ。

 「クリエーターとして、皆が一生懸命に取り組んでいました」。八田社長は会見の席ではっきりと述べた。

犠牲者を悼むとともに、京アニ再建への思いを語る八田社長(18日午後、京都市下京区)

■新作「会社を支えてくれている」

 制作の中心的役割を担う作り手を失い、その影響が懸念された。八田社長自身、「会社としての創造力という部分は、かなり激減した」と打ち明ける。しかし、京アニが事件後に初めて完成させた同作は、シリーズの特長である美しい情景描写を引き継ぎ、封切りから4カ月で145万人以上を動員する大ヒットを記録。今年1月の第44回日本アカデミー賞で優秀アニメーション作品賞に輝いた。

 現在は「劇場版 Free!-the Final Stroke-前編」の公開を控えるなど、他シリーズの制作も積極的に進める。八田社長は、今月に放映が始まった新作テレビアニメ「小林さんちのメイドラゴンS」にも触れ「皆で一生懸命に作った作品が、会社の運営を支えてくれている」と語った。

 フリーランスが当たり前の業界にありながら、正社員化にこだわる経営方針があったからこそ、京アニで培われた技術は先輩から後輩へと代々受け継がれてきた。「ものづくりで大切なのは人」。八田社長がこう表現する社風こそが、国内随一と呼ばれるまでに成長を遂げる原動力となった。

追悼式の会場に入る京アニの八田社長(18日午前、京都市伏見区)=代表撮影

■一度に奪われた仲間の命

 事件はそれを壊した。被害に遭ったのは当時176人いた社員の約4割(負傷者含む)。類まれな画才で京アニ発展の礎を築いた木上益治(きがみよしじ)さん=当時(61)=や、人気シリーズの監督として旗振り役を務めた武本康弘さん=同(47)=ら中核的存在のみならず、新入社員をはじめ未来を担うはずだった若手の命を一度に奪った。

京都アニメーション第1スタジオ跡地で営まれた追悼式(18日午前、京都市伏見区)=京都アニメーション提供

■「皆の思い、未来へつなぐ」

 会見に先立って京アニが報道機関に寄せた文書で、八田社長は犠牲者を「とても優秀で、本当に誇らしい仲間たち」と惜しんだ。たとえ事件の真相解明が進んでも「命を奪われた仲間たちが戻ってくることも、傷つけられた仲間たちの傷が癒やされることはない」とやり場のない怒りをにじませた。

 それでも、八田社長の会見での言葉からは、着実に前へ進もうとする意志がのぞいた。会見の中盤、八田社長が報道陣に紹介したのは、今年4月に入社した新入社員の前向きな働きぶり。そんな新人が、事件から2年となるのを前にこんなメッセージをつづったという。

 「受け継がれてきた歴史や作品づくりへの思いを自分たちが引き継ぎ、未来へつないでいきたい。そのために自分たちにできることを精いっぱい取り組んでまいります」