5回途中1失点7奪三振と好投した上野=福島県営あづま球場

5回途中1失点7奪三振と好投した上野=福島県営あづま球場

 「やっと、この舞台に戻ってこられた」。金メダルに輝いた北京五輪の決勝から13年。準決勝からの3連投で413球を投げ抜いたエース上野由岐子(ビックカメラ高崎)の時計の針が、福島で再び動き始めた。

 初球は腰をかがめ力をじっくりとため、速球を投じた。強い日差しが降り注ぎ、球場にはセミの声と上空を飛ぶヘリの音が響く。表情は変えなかったが、気持ちは高ぶっていた。「13年ぶりという感傷はなかった。ただ、このマウンドに立つためにいろいろと取り組んできたので、ワクワク感しかなかった」

 初回こそ押し出し死球で先制点を献上したが、二回以降は大胆に攻めた。「目の前の打者を見て、感じるままに勝負した」。22日で39歳になるベテランは、1球ごとに球筋とフォームを確認しながら熟練の投球。7三振を奪い、二回以降は二塁も踏ませなかった。

 無観客のため白星発進に湧く歓声はない。2018年の夏、千葉であった米国との世界選手権決勝は歓声に助けられたことを記憶している。延長十回まで試合はもつれ「苦しい時の上野コールに、どれだけ背中を押してもらったか。今でも感動を忘れない」。

 北京五輪の後、ソフトボールは五輪競技から除外された。新型コロナウイルスの拡大、東京五輪の1年延期…。日本エースの座を守り続けてきた上野は覚悟を決めている。

 「テレビや報道を通じて何かを伝えられるように、ただがむしゃらに、必死にグランドで戦うだけだと思っている。その思いを福島に置いていけるように戦いたい」