10年ごとに講習を義務付ける「教員免許更新制」について、文部科学省が廃止する方向で検討している。導入当初から在り方や効果が疑問視され、学校現場の重い負担を考えれば廃止が妥当であろう。

 萩生田光一文科相が「抜本的見直し」を中教審に諮問していた。文科省は廃止の結論を得られれば、来年にも教育職員免許法改正案の国会提出を目指すという。

 教員免許に10年間の有効期間を設ける制度であり、期限前の2年間に大学などで、いじめや不登校への対応、英語教育など30時間以上の講習を受け、修了しなければ失効する。

 教員として必要な最新の知識や技術を身に付ける「教員の資質向上」が狙いとされ、昨年は約16万人が講習対象となった。

 「教育再生」を掲げた第1次安倍晋三政権下の2007年、更新制を盛り込んだ法改正を野党の反対を押し切って強行、09年4月に導入された。発端は自民党議員らの「指導力不足の教員がいる」との批判からで、政治主導の拙速な進め方に学校現場の不満は強かった。

 学校では今、情報通信技術(ICT)の活用や小学校での英語教育など新たな指導項目が増え、教員の多忙化に拍車が掛かっている。そんな中、講習は土日や夏休み期間に開かれることが多い。まとまった受講時間の確保は容易でない。

 長時間勤務など厳しい労働環境が改善されない中、休みを返上して受講せざるを得ない講習が教員の負担を増幅させているという。多忙な教員の働き方改革にも逆行する。

 加えて、3万円程度かかる受講料や交通費は、教員の自己負担となる。うっかり更新手続きを忘れて、失職する教員も後を絶たない。

 文科省の教員へのアンケートでは、6割近くが更新制に不満を訴えた。講習内容が「現実と懸け離れ、実践的ではない」といった指摘が目立ち、効果を疑問視する声は根強い。学校現場の実感として当然だろう。

 教員不足に拍車を掛けているとの懸念もある。定年前に更新を迎えれば、早期退職の動機になる。退職した人の多くは免許を更新せずに失効しており、産休や病気休職を補う代替教員としての復職を阻んでいる。

 教員免許が「期限付き」となったことで学生たちの教職への意欲低下を招いているとも言われる。教職への志望者減少に歯止めがかからず優秀な人材が確保できなければ、教育の質にも影響が出かねない。

 導入から10年余りが経過し、免許更新制の弊害が目立っている。自民党内には、なお存続を求める意見があるというが、現場の実態を直視すべきだ。制度の見直し、廃止に向けた検討は遅きに失したと言える。

 とはいえ「資質向上」の重要性に異存はない。制度廃止後、研修をいかに充実させるか、議論を急ぐ必要がある。

 各教育委員会が実施している研修の拡充に加え、学校や在宅でも受けられるオンライン講座など、教員の負担軽減にも配慮した新たな形で学びの機会を工夫してもらいたい。