玉木正之さん

玉木正之さん

 祇園の実家の電器店で小学6年の時に1964年の東京五輪を見て大感激したことがスポーツライターになったきっかけでもある。69歳の今までこの職業を続けてきて2回目の東京五輪が行われることになり、招致の時は大賛成してシンポジウムやイベントに参加したが、これほどまでに人気のない五輪になってしまった。ものすごく残念です。

 振り返れば公式エンブレムの盗作や国立競技場の建て直し問題があり、全体予算も当初より膨らんだ。大会組織委員会前会長の女性蔑視発言もあり、事件だらけでうんざりしていたところに、最後にコロナでとどめを刺されたという感じ。

 国際オリンピック委員会(IOC)に対して全く支持できない立場になった。反戦を掲げながら自分たちの経済効果を考え、組織存続のために五輪を開催するというのが透けて見える。かつては『公共事業』の顔をして世界で五輪を盛り上げようとうたっていたが、お金を集めるシステムをつくり、国際的なイベント屋になっている。組織委に800億円ぐらいを援助しているが、IOCの子会社に900億円ぐらい支払わないといけない。なんじゃこりゃ、と思う。

 根本にあるのは商業主義と肥大化だ。商業主義のきっかけとなった1984年のロサンゼルス五輪は、税金を1セントも投入せず組織委は黒字を出した。そのやり方をIOCが奪い、権利も自分たちのものにしてどんどん大きくなった。

 首都圏は無観客となったが、去年の時点で中止すべきだった。コロナ禍の困難を克服して開く大会に一体どういうレガシー(遺産)が残るか。IOCが主催する五輪はやめた方がいい、というのが残れば良いのかもしれないが。

 コロナ禍で国や選手の置かれた環境に差が出る。スポーツの大前提となる公平性が担保されない面があるなら、IOCはメディアに対し国別メダル数の発表を控えてと言った方がいい。そもそもIOC憲章には「国対抗の競技大会ではない」と書いてあるんだから。(談)

 たまき・まさゆき  京都市東山区出身。洛星中・高校時代はバドミントン部に所属し団体で全国高校総体に出場。東京大中退後、ミニコミ出版の編集者などを経てスポーツライターとなり音楽評論家や小説家、放送作家としても活躍。日本福祉大の客員教授を務める。