大橋悠依選手

大橋悠依選手

 記録の壁にぶつかり、自信を失いかけていた昨シーズン。競泳女子の大橋悠依(25)=イトマン東進、滋賀県彦根市出身=は、一人のスイマーに救われた。「練習中もレース前も励まされ、奮い立つことができた」。逆境を乗り越えた400メートル個人メドレーの第一人者は25日の決勝で、悲願のメダルに挑む。現役を退いた盟友の思いを胸に。

 バタフライや背泳ぎなど4泳法の総合力に加え、体力も求められる400メートル個人メドレーは過酷な種目だ。国内ではライバル不在の強さを誇ってきた大橋だが、日本記録をマークした2018年以降は、理想の泳ぎに近づけず試行錯誤を繰り返した。19年の世界選手権で銅メダルを獲得したが、「日本人は一人で不安だった。きついし、サッコさんもいなかったし、もう泳げないと思った」と明かす。

 「サッコさん」と大橋が信頼を置くのはリオデジャネイロ五輪400メートル個人メドレー8位入賞の清水咲子さん(29)。昨秋に平井伯昌(のりまさ)・日本代表監督(58)の指導グループに加わり、ライバルでもある年下の大橋を鼓舞し、泳ぎ方の助言を続けた。

 「サッコさんがいたから続けられた」

 同種目を諦めることも考えていた悩み多き日本のエースは、同志の支えで息を吹き返した。2人そろっての五輪出場が目標になった。

 しかし、非情な結末が待っていた。2位以内が代表入りの条件だった4月の五輪代表選考会で大橋は優勝、清水さんはタッチの差で3位。「情けなくてごめん」。五輪出場を逃し、天を仰いだ清水さんが声を絞り出すと、隣で泳いだ大橋の目から涙があふれた。

 レース後、清水さんは「まだまだ強くなる。オリンピックで泳ぐ姿を応援する」とエールを送った。それから2週間あまり。自身の誕生日だった4月20日、現役生活に別れを告げた。

 苦しい時期を支えてくれた先輩スイマーの思いを受け止め、大橋は「心が折れそうな時、ずっと声を掛けてもらった。サッコさんが引っ張ってきたこの種目を背負って、精いっぱい頑張る」。きょうの大一番に全てをぶつける覚悟だ。