大橋悠依

大橋悠依

 東京五輪の競泳女子200メートル個人メドレーが28日、東京アクアティクスセンターで行われ、彦根市出身の大橋悠依(イトマン東進、草津東高―東洋大出)が2分8秒52で制し、400メートル個人メドレーに続いて金メダルを獲得した。日本競泳女子で2冠は史上初の快挙。「きょうは純粋に自信もあったし、すごく楽しんでレースをすることができた」と話し、とびきりの笑顔を振りまいた。

 最後の自由形へのターンで隣レーンの米国選手と並んだ。何度も思い描いてきたのはラスト15メートルで競り勝ってフィニッシュするイメージ。しかし、わずかに先行を許した。「これは厳しいかも。勝っても、負けても全力を出し切ったと言えるように」と直感を頼りに勝負に出た。最後は息継ぎなしのストローク。0秒13というタッチの差でかわし、2冠の頂に立った。


 大橋はかつて、泳いでいる際のわずかな体幹のぶれを1本の糸に例え、こう分析したことがある。


 「ピンと張った状態じゃなく、たるんだまま。泳いでいて手の先からつま先までが短くなった感覚。うまく水に力が伝わらない」


 200、400メートルの距離に合わせ4泳法を緻密に泳ぎ分ける個人メドレーの2種目。世界でも両立する選手が少ない中、見事に両種目で金メダルを手にした。信じたのは、自らの「鋭すぎる感覚」だった。


 昔から、レースでは自分が水面下何センチで泳いでいるか体感で分かった。壁の手前15メートルから最適なターンのタイミングを察知し、ストローク数を調整しタッチを合わせることもできる。際立つ鋭敏さは「ある種の強み」と自覚しつつ、繊細すぎるために「何か違う」とわずかな泳ぎの左右差にも悩まされてきた。


 原因は左膝に抱える大学時代の古傷。けがをかばってきたことで、筋肉の付き方も変わり泳ぎに影響が出ていた。4年前の世界選手権で銀メダルに輝き、「良かった頃の感覚を体が覚えている」だけに妥協はできない。五輪が1年延期された時間を利用し、リハビリに専念した。弱い部分の筋肉量を増やし、上半身と下半身のバランスを整えた。「たるんだ糸」は一直線に伸びていった。


 決勝で泳いだ2レーンはこれまで好記録を重ねてきた得意な「端っこコース」。「ラッキー、いけるなと思った」と歴史的偉業を成し遂げた後も、明るい普段の大橋節は健在だった。感覚を研ぎすませた第一人者の胸に、二つ目のメダルが輝いた。