店主の萩野さん(右)と写真に納まる大橋=2018年・東京都、萩野さん提供

店主の萩野さん(右)と写真に納まる大橋=2018年・東京都、萩野さん提供

 東京の新橋駅から電車に揺られて約40分。トップアスリートの強化拠点「味の素ナショナルトレーニングセンター(東京都北区)にほど近い、静かな商店街の一角にその料理店はあった。女子競泳界で五輪史上初の2冠を果たした大橋悠依選手(25)のなじみのお店だ。

 扉をたたいた。「京都から?それじゃ帰せないじゃん」。店主の萩野竜一さん(56)は快く迎え入れてくれた。店内に大橋選手らのサインや写真が並ぶ。滋賀県彦根市の親元を離れ、東京で暮らすエースに4、5年前から料理を振る舞い、支えてきた。4月には本人から「マスター、お弁当作って」と注文が入り、たけのこご飯など3日分をこしらえた。

 開会式当日。LINE(ライン)に「緊張してます。楽しみます」と連絡があった。萩野さんは「笑ってるのが一番いいらしいよ」と送り返した。各決勝レース前には「金 生うに、銀 うなぎ、銅 もつ煮、サービス」など好物を並べた2種類の手書きメニューの写真を送信し、元気づけた。

 応援団長を自負し、レース後は思わず泣いた。「娘と同じ年でね。厳しい練習に耐え、苦労している姿も知ってるから」と涙の理由を語った。

 「再会したらどんな言葉をかけますか?」。記者の問いに、「とりあえず泣いちゃうな。でも、こう言うよ。予定通りだったな、って」。笑顔からは親心に似た愛情があふれていた。