Vリーグの試合で、競り合う黒後(1月30日、ウカルちゃんアリーナ)

Vリーグの試合で、競り合う黒後(1月30日、ウカルちゃんアリーナ)

 早くから将来を期待された23歳の大器が、真のエースへ飛躍の時を迎えている。バレーボール女子代表の黒後愛は、大津市に拠点を置く東レで技を磨き、日本の主軸へと成長した。チームで、代表で、求めてきた理想像は「苦しい時に点を決めきれる選手」。決勝トーナメント進出をかけて負けられない31日夜の韓国戦に挑む。

 下北沢成徳高で全日本高校選手権を2連覇し東レへ。日本のエースとして五輪に4度出場した木村沙織さんが引退した2017年に入社した。「ずっと憧れていた」という高校の先輩と同じ進路をたどり、同年から代表でも経験を積んだ。

 ただ、道のりは平坦ではなかった。東レでは1年目から主力を担ったものの6位と振るわず「もがいて、苦しかった」。さりげなく飲み物や手紙を渡してくれる同期選手の気遣いに救われた。新型コロナウイルス感染拡大前は、県内の入浴施設でお年寄りに交じってリフレッシュするのが楽しみだったという。

 五輪が1年延期された20年は「大きな挑戦」に向き合った。22歳の若さで東レの主将に就任。「チームで勝つために、ということをすごく考えた」。あと一歩で優勝を逃した今年2月のVリーグ決勝では、自身はコートで涙を見せず、泣きじゃくる仲間を励ます姿があった。中道瞳コーチ(ロンドン五輪代表、京都橘高出)は「不器用で、悩みながらもみんなを引っ張った。自分だけでは勝てない、支えがないと輝けないと学んだのでは」と成長を認める。

 身長180センチ、最高到達点306センチの高さから力強くスパイクをたたき込み、高い海外勢のブロックにもひるまない。コートでの存在感や爆発力は、日本代表でもすでに圧倒的だ。中田久美監督は「スイッチが入った時の打力や読み、スピードは外国選手にひけをとらない。どんどん引っ張っていくエースになってもらいたい」と話す。

 大会前は「自分の中ではまだ(エースと)言い切れないと思っている」と語った。「仲間がつないでくれた1本を打ち切るのはアタッカーの責任。決めたい」。理想のエースに向かって何度でも跳ぶ。