30キロを過ぎ先頭集団で争う一山(7日午前7時52分、札幌市)

30キロを過ぎ先頭集団で争う一山(7日午前7時52分、札幌市)

一山との思い出を語る出水中央高の黒田監督(鹿児島県・出水市陸上競技場)

一山との思い出を語る出水中央高の黒田監督(鹿児島県・出水市陸上競技場)

30キロを過ぎ先頭集団で走る一山(7日午前7時52分、札幌市)

30キロを過ぎ先頭集団で走る一山(7日午前7時52分、札幌市)

女子マラソン スタートする一山(中央)=7日午前6時3分、札幌市

女子マラソン スタートする一山(中央)=7日午前6時3分、札幌市

 陸上女子マラソンで一山麻緒(24)=ワコール=が8位入賞した。一山はレース後、「世界の選手は暑くても強いと思った。出来るだけ長く先頭集団で走りたいとついて行った。これ以上頑張れないというくらい走ってきたので、今日は勝てなかったけれど悔いはないです」と話した。

 一山麻緒には、苦しい時に自らを奮い立たせる「魔法の言葉」がある。送り主は高校時代の恩師。大事な場面で届く金言はいつも力の源になった。初の五輪を前に贈られた言葉は「奇跡を起こして」。古里の鹿児島を巣立ち、京都で力を伸ばした期待の星は、恩師の思いを胸に札幌を駆け抜けた。


 出水中央高(鹿児島県)の卒業を控えたある日。女子駅伝部の日誌に記された一文に目が留まった。「麻緒が将来、テレビに映って活躍する姿を想像すると、僕は長生きしないといけないね」。一山はスマートフォンで撮影し、保存した。


 書いたのは同部の黒田安名(やすな)監督(66)=鹿児島県出水市。「実業団に進むことが決まっていたので、強くなってオリンピックに出てもらいたかった。僕の夢でもあった」とメッセージに込めた思いを語る。


 一山はワコール1年目から頭角を現した。自身初の全日本実業団対抗駅伝は1区区間新。その後も長距離レースで好記録を連発し、全国女子駅伝では京都チームのアンカーとして優勝のゴールテープを切った。不調や悩んだ時に読み返し、支えにしたのが恩師からのメッセージだった。


 初マラソンからわずか1年後の2020年3月。一山は名古屋で行われた五輪代表最終選考会のスタートラインに立っていた。レース前に届いたメッセージは、「歴史に残る走りをしよう」。日本歴代4位の2時間20分29秒、大会新記録で優勝した一山は五輪切符をつかんだ。日本人国内最高記録の更新、女子単独レースのアジア記録も加わり、まさに歴史を塗り替えた。一山は「『新しい歴史をつくったね』って先生が喜んでくれてうれしかった」と笑顔を見せた。


 黒田監督は「五輪はメダルだけじゃない。彼女は全部理解できている」と言う。オリンピアンに名を連ねた教え子に「奇跡を起こして」との言葉を選んだ。社会人で一躍トップアスリートへの階段を駆け上った一山は、今も感謝と恩返しの気持ちを忘れない。