「地方自治は民主主義の学校」とは、よく知られた言葉である。その「学校」が危機にひんしている。人口減少に伴い、現実の学校が地域から次々と姿を消していくかのように…。

 統一地方選は21日の11知事選告示でスタートした。地元京滋でもきょう、京都府議選と市議選、滋賀県議選が幕を開ける。来月には後半戦となる市区町村長、議員選が控える。

 地方選全体に占める選挙件数の割合を示す「統一率」は近年30%を割っている。それでも全国で千件近い選挙がある。

 平成最後の約1カ月間にわたって、最も身近な選挙が行われる意味を考えたい。選挙権が18歳以上に引き下げられて初の統一地方選でもある。

 新時代に向け、わがまちの未来をどう描くのか。自治の在り方、民主政治そのものを問い直す機会としたい。

 ■投票率低下歯止めを

 統一地方選は1947年に始まり、第19回になる。今回は参院選と重なる12年に1度の「亥(い)年選挙」に当たる。

 気掛かりなのは近年の投票率の低迷ぶりだ。4年前の統一選の知事選は平均で47・14%と初めて5割を切った。

 地元をみても前回の京都府議選は41・75%、京都市議選は40・95%、滋賀県議選は46・54%と、いずれも過去最低を更新した。

 今回も盛り上がりが心配だ。再び都構想を問い、知事・市長のダブル選となった大阪は注目されるが、知事選で与野党が全面対決するのは北海道だけだ。

 4県は争点がみえにくくなりがちな保守分裂選挙となった。24日に告示された6政令市長選でも、与野党が全面対決する構図はみられない。

 地方が抱える課題は多い。人口減少一つとってみても対策は容易ではない。行政サービスをいかに維持するか、知恵を出し合う必要がある。

 地方選は日々の暮らしに直結する具体的な政策を競う場である。棄権が多いのは、民主政治の根幹に関わる問題だ。投票率の低下に歯止めがかかるかどうかは、焦点の一つといえるだろう。

 ■多様な住民参加こそ

 低投票率とともに大きな課題となっているのが、議員のなり手不足である。今回の選挙でも深刻度を増している。

 共同通信の集計(9日現在)では、41道府県議選で総定数の29・0%に当たる議席が無投票当選になる見込みだ。過去最高だった前回の21・9%を大きく上回る。

 京都府議選をみると、京都市内の11選挙区中、半分近い5選挙区で無投票の公算が大きくなっている。滋賀県議選でも3選挙区で無投票になる可能性があり、栗東市選挙区は県議選初の3期連続となりそうだという。

 有権者が投票の機会を失い、審判を受けないまま地域の政治を動かす人たちが決まる。民主政治の正統性が問われかねない。

 定数を減らす動きも広がっているが、中には無投票どころか定数を割り込んで再選挙となるケースもみられる。

 女性や若者、障害者ら多様な住民が参加しやすい議会となっているかどうか、抜本的に見直す必要があるのではないか。

 民意の集約には、いろいろな方法があってもいい。議員のなり手不足から、有権者が直接審議する「村総会」を検討した高知県大川村は注目を集めた。

 ■足元の課題見つめる

 柔軟な発想で在り方を模索するのは、自治を活性化することにもつながるだろう。ピンチを逆に生かしたい。

 京都市でいま、大きな問題になっているのは「観光公害」だ。

 押し寄せる訪日客が住民の生活を脅かす事態となっている。とはいえ単純に閉め出すというわけにもいかない。4月からは外国人労働者の受け入れも拡大する。排除的な考えが広がるのは危険だという意見もあるだろう。

 何らかのルールが求められるのではないか。課題は自治が成熟するためのチャンスでもあり、まさに「学校」だ。

 各候補の訴えに耳を傾け、政策を吟味したい。

 京都府全体でみると、過疎化などの問題が浮上する。京都市内とは逆に、いかに観光振興を図るかもテーマの一つだろう。

 地域ごとに異なる課題を抱えるのは滋賀も同じだ。子育て世代が増える南部の市と、過疎高齢化が進む地域ではまちづくりの方向性も違ってくる。

 戦後しばらくは、日本全体が同じ方向に向かって発展を目指していたような時代があった。「モデル」は上から示された。

 人口減少時代を迎えて、地域はいや応なしに足元の課題に向き合わされる。処方箋はそれぞれが探らなくてはならない。困難だが、本当の地域力が試されているともいえる。

 日々の暮らしの中で感じる課題をとっかかりに、まずは一票を行使したい。